富樫勇樹

シナリオ通り3本目のフリースローを外すも、結果に結びつかず

千葉ジェッツは宇都宮ブレックスとのチャンピオンシップクォーターファイナルに敗れ、シーズンを終えた。

初戦を落として迎えた第2戦、千葉は富樫勇樹と佐藤卓磨以外の先発メンバーを替えた。大野篤史ヘッドコーチは「シーズンエンドから第1クォーターが上手くいかなかったので、何かを変えないといけない。短期決戦で何かを待つのではなく、自分たちから仕掛けないといけないと思って変えました」と、その理由を明かしたが、結果は9-23とその作戦は功を奏さなかった。

その後、大事な場面での1本が来ず、逆に相手に決められてしまう苦しい展開が続いたが、ゲームハイの17得点を挙げた富樫勇樹の活躍もあり、最終クォーター残り34秒には3点差まで迫った。直後、遠藤祐亮に3ポイントシュートを決められ、万事休すとなったが、富樫は最後まで勝利をあきらめていなかった。

残り9.8秒、富樫は3ポイントシュートを放ち、ファウルを獲得。3本すべてを決めれば、再び1ポゼッション差に迫ることができる。だが、残り時間を考え、3本目をわざと外した。富樫は言う。「決めても3点差で、相手のフリースローが1本でも入れば、2ポゼッションゲームになる。時間を考えたら、外して2点か3点がクイックで入れば、もう少し可能性が出るのかなと思い、コートにいる5人で話して、そういう選択をしました」

富樫はフリースローを打つ前に選手を集めた際、原修太に左側を指さすジェスチャーをしていた。「ジョン(ムーニー)が左側にいたので、できるだけ目の前の選手を中に連れて行き、原選手に左側を走らせて取らせるという話をしていました」。富樫が描いたプラン通りのプレーがなされたが、遠藤のマークを振り切れなかったこともあり、原がダイブしてボールに飛びつくもアウトオブバウンズになってしまった。

このプレーが成功していたらと思わざるを得ないが、極限の状況で勝ち筋を探し求めた、富樫の勝利への執念が表れたプレーだった。また、この一連のプレーはレギュラーシーズン最終戦で死闘を繰り広げたライバルからインスピレーションを得たプレーだったとも明かした。

「ホーム最終戦でSR渋谷と戦った時に、(ベンドラメ)礼生が左に外して、サイドラインを踏んでしまってアウトオブバウンズになりました。試合後に『わざと外した?』と聞いたら、ああいうデザインだったと。わざと外して、もう一回リバウンドを取るのがチームとしての指示かは分からないですけど、まさに先週に聞いていたので。ちょっとギャンブルですけど、わざと外してこっちのチャンスにしようと思いました」

富樫勇樹

「優勝以外はブースターに喜んでもらえないチーム」

千葉はBリーグ初年度から強豪としての地位を確立し、天皇杯やBリーグ王者など数々のタイトルを獲得してきた。言わば、勝つことが当たり前のような状況となっており、富樫も「優勝以外はブースターに喜んでもらえないチームだと思う」と言う。

だからこそ富樫は「こういう結果で終わってしまい、もちろん残念です」と悔しさを滲ませたが、それと同時に「初年度以降ファイナルに行き続けてきたこのチームを褒めたいと思う」とも話し、現在のチームに胸を張った。

「毎年勝つのは本当に簡単なことではないですし、それをこの試合で痛感しました。プロの世界では全員同じ選手で2シーズン以上やることはほとんどないと思うので、このメンバーでやる最後だと思ってプレーしてきました。全員が努力して、選手も監督もスタッフもいろいろな人のおかげでここまで来れているので、全員に感謝の気持ちしかないです。僕はまた来年、千葉にいる選手とともに優勝を目指して頑張りたいです」

千葉は昨シーズンよりも早くオフシーズンへ突入することとなった。コロナ禍の大変なシーズンで受けたダメージを完全に回復させ、縦横無尽にコートを駆け回る富樫の雄姿を早く見たい。