ニック・ファジーカス

主力のファウルトラブルも影響なし、総合力の高さで三河に勝利

5月8日、川崎ブレイブサンダースは敵地でシーホース三河と対戦。29得点7アシスト5リバウンドと大活躍だった藤井祐眞を筆頭に、高確率でシュートを沈め91-76で勝利した。これで川崎は地区優勝こそあと一歩で逃したが、東地区2位でレギュラーシーズンを終了。実にリーグ初年度以来となるチャンピオンシップのホーム開催を実現している。

この試合、川崎は第1クォーターで堅守からリズムをつかみ2桁リードを奪ったが、第2クォーターになると三河にトランジションから走られてしまい逆転されてしまう。そして第3クォーターは一進一退の展開となるが、この我慢比べを制したことで自分たちの流れに持っていき、最終的には2桁以上の点差をつけて勝利した。

我慢比べで川崎が崩れなかったのはファジーカスの貢献が大きかった。前半は相手ディフェンスの激しいプレッシャーに苦しみ4得点6ターンオーバーと苦しんでいたが、後半になってしっかり修正し、第3クォーターだけで11得点をマークした。

川崎は大黒柱のファジーカス、藤井が揃って序盤にファウルトラブルに陥ったが、その影響を感じさせない戦いぶりだった。ファジーカスは勝因として、総合力の高さを挙げた。「これはチームみんなの力を結集して戦えているからです。祐眞か僕がチーム最多の得点を多くの試合で記録しています。でも他の選手たちが、それぞれ違う形で貢献をしてくれています。J(ジョーダン・ヒース)、パブロ(アギラール)を中心にディフェンスでカバーしてくれました。チームでつかんだ勝利です」

ニック・ファジーカス

ホーム開催の利「自宅で食事をし、睡眠を取ることができるのは大きい」

これで川崎はレギュラーシーズンを7連勝で終えた。惜しくも東地区優勝を逃したが、ファジーカスはここ2週間の戦いぶりに充実感を得ている。「5連勝すれば自力でクォーターファイナルのホームコート開催を得られるところから5連勝し、最終的に7連勝で終えました。地区優勝をしたかったですが、千葉さんが負けなかった。これは自分たちでコントロールできないことです。まずは『おめでとう』と言ってもらえることを達成したと思います」

7連勝の前は、秋田ノーザンハピネッツ相手に19点差をひっくり返されて逆転負け、宇都宮ブレックス相手にオフェンス沈黙で敗戦など、チームの調子は下降線を辿っていた。そこから立て直しに成功した要因をファジーカスはこのように明かす。「チームでミーティングを行い、良い形でシーズンを終えようと話し合いました。コーチングスタッフと話して、これまでと少し違うやり方を取り入れたのがうまくいっています。その結果、連勝で終えることができました」

今シーズン、ファジーカスは何度もリーグ制覇を果たすためには、チャンピオンシップでのホーム開催が重要と話してきた。そこには昨シーズン、クォーターファイナルを大阪、セミファイナルを宇都宮と遠征が続くことで、万全な調整を行うのが難しかった教訓があったからだ。だからこそ4月中旬、一時は東地区3位となりクォーターファイナルが島根、そこを勝ってもセミファイナルが沖縄となりえる状況はなんとしても避けたいところだった。そこから連勝で盛り返し、クォーターファイナルを本拠地とどろきアリーナで開催できることに「とても興奮しています」と笑顔を見せる。

「大きなアドバンテージとなります。これからの1週間、自宅で食事をし、睡眠を取ることができる。これは大きいことで、とどろきで再び戦えるのが楽しみです」

「(東地区3位だった場合)飛行機で島根に行き、そこを勝ち抜いて川崎に戻ってきてもすぐにまた飛行機で沖縄に行かないといけないのはとてもタフです。それが、まずはホーム開催となりました。ここで勝てばセミファイナルは川崎からも近い千葉さんのホームになるか、宇都宮さんが勝てば再びとどろきで試合ができます。自分たちにできる限りのベストな状況にできたと思います」

ニック・ファジーカス

「エナジーは落ちたかもしれないけど、相手は引き続き僕を注意しないといけない」

最終的にレギュラーシーズンのファジーカスはリーグ3位の1試合平均19.7得点に加え、8.9リバウンド4.3アシストを記録。開幕1カ月終了時点では23本中4本成功と苦しんだ3ポイントシュートも、最終的には成功率42%と高確率で、例年と変わらない素晴らしい成績を残した。

今シーズンはコロナ禍による試合延期の影響もあり、特にシーズン終盤は週3日の試合が1カ月以上に渡って続いた。ただ、36歳のベテランは、この過密日程の影響を全く感じさせないプレーを披露した。そこには「年齢はただの数字です」と言い切るだけのトレーニングを継続している自負がある。

「毎週、トレーニングを続けることでコンディションは昔と変わらないです。シーズン中盤までシュートの確率が良くなかったですが、それを受けてジムにいってトレーニングをたくさんすることで、調子を戻すことができました。少し歳をとって、昔と比べると動けなくなったかもしれないですし、エナジーは落ちたかもしれないです。ただ、相手は引き続き僕を注意しないといけないと思います」

また、30代前半の頃と変わらない影響力を試合で発揮している背景には、数年前と比べ効率をより重視するプレースタイルへの移行もある。「(セットオフェンスで周りからお膳立てされた)スポットシュートを打っていくなど、よりシュートを効果的に決められるようにプレースタイルを変えようとしています。それがここ一月半くらいはよりできています。これまでと比べると多くのシュートを放つことはないです。ただ、10本中8本を決めるような形で、効果的なプレーをできていると思います」

最後の1カ月は過密スケジュールから、多くの試合でファジーカスの出場時間は30分以下といつもに比べて制限されていた。だが、チャンピオンシップは負けたら終わりの大一番で、「ヘッドコーチに聞いてほしいけど、1試合35分プレーする準備はフィジカル、メンタルともにできています」とフル稼働する気持でいる。

苦しい時期を乗り越えた今の川崎は、Bリーグになってから初の優勝へ理想的なチーム状況だ。ファジーカスは最後にこう締めくくっている。「チャンピオンシップは楽しいスタートとなります。天皇杯優勝の再来をできる雰囲気になっていると感じています」

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