渡邊雄太

試合に出られる楽しさを知った分「今まで以上に試合に出られないしんどさがあった」

NBAでの4年目のシーズンを終えた渡邊雄太が帰国し、5月6日にオンラインでの会見を行った。

昨シーズン途中にラプターズとの本契約を獲得した渡邊は、今シーズンも本契約を結び、レギュラーシーズン38試合に出場して、キャリア初となるプレーオフにも出場した。

渡邊は「今シーズンは本当にたくさんのことがあって、良いこともたくさん経験させてもらいましたし、逆に悪いことも経験しました」とシーズンを振り返る。「その中でシーズン中にいろいろな葛藤もありましたが、終わってみたら良いシーズンだったと思います。自信にもなったし、いろいろなことを証明できたシーズンでした」

「シーズン中盤からローテーションから外れて試合に出られなくなったのは悔しかったですが、まだまだNBAの世界でやっていけると自信をつけた1シーズンだったと思います」と、シーズン半ばからプレータイムが減ったことにも触れた。

渡邊は左ふくらはぎの張りのためプレシーズン1試合出場を除いてシーズン開幕から欠場が続いたが、開幕1カ月後の現地11月24日に今シーズン初出場を果たすと、ケガ人と健康安全プロトコル入りで選手が足りないチームを攻守に支える存在となった。もともと定評のあるディフェンスはもちろん、攻め手を欠く中で積極的なアタックも連発し、14試合出場で7.6得点、4.3リバウンド、1.1アシストとキャリアハイの数字を残し、2試合では先発も任されて平均プレータイムは20.5分にまで伸びていた。さらに12月13日のキングス戦で12得点10リバウンドをマークしキャリア初のダブル・ダブルを達成すると、12月27日のキャバリアーズ戦でも26得点13リバウンドを挙げ、存在感を発揮していた。

しかし、1月上旬に渡邊自身も健康安全プロトコル入りし、戦線離脱することに。渡邊は「自分がコロナにかかって何日間か何もできずに戻った試合で調子が悪くて、そこからリズムが悪くなってローテーションから外れました」と語る。また渡邊が戦線離脱した同時期に、今まで離脱していたチームメートが復活したこともあり、その後の渡邊はローテーションから外れ、最終的には平均プレータイム11.7分で4.3得点、2.4リバウンドという数字になった。

シーズン序盤ではローテーション入りし実力を発揮していただけに、その後試合に出られなくなり「今までの3シーズン以上に試合に出られないことのしんどさがありました」と渡邊は明かす。「自分が一度、ローテーションの選手として、ある程度の時間で試合に出られる楽しさを知ってしまった分、試合に出られなくなった時にそのギャップをすごく感じました。それが今までの3シーズン以上に試合に出られないことのしんどさがあり、そこは今シーズン一番キツかったです」

渡邊雄太

「本契約選手として一年間やれたのは自信になりました」

試合に出られない悔しさを再び味わった渡邊だが、それ以上に得た自信の方が大きい。渡邊は言う。「自分がローテーションの選手として試合に出ていた時は、数字もある程度残せましたし、数字に残らない部分でも活躍できました。昨シーズンはできなかったダブル・ダブルを達成したりと、今までできなかった課題を達成できたと思います。そういうことは実力がないとできないですし、良かった試合が1、2試合だけじゃなく、ローテーションの選手として出ていた時は一定の活躍ができていたので、自信に繋がりました」

また渡邊にとって、このシーズンは初めて本契約の選手として1シーズンを過ごしたことも大きな自信になったと言う。これまでの3シーズンも2ウェイ契約でNBAの試合に出場していたが「自分の自覚や責任が2ウェイ契約の時より増えたかなと思います」と言う。「その分、もっと活躍しなきゃいけないというか、プレッシャーも少し乗っかってきましたが、そこを含めて本契約選手として一年間やれたのは自信になりました。もともとトレーニングキャンプは契約が完全保証ではないところから始まりましたが、そこで勝ち取ってシーズンをやりきれたのは大きな自信になりました」

今オフにはフリーエージェントになる渡邊だが、まだ来シーズンのことは何も決まっていないという。それでも、「来シーズンは分からないですが、シーズンが始まった時にベストな自分で臨めるようにオフを過ごしたいです」と、オンオフのメリハリをつけながらも新シーズンに向けて準備を行うと語った。

スタッツだけを見れば昨シーズンを下回ってしまったが、今シーズンはローテーション入りして試合に出場し実力を証明してみせただけに、渡邊の今後の活躍がより期待されるシーズンとなったはずだ。

この会見は約1時間に渡って行われたが、渡邊はすべての質問に丁寧に自分の言葉で答えてくれた。そして、最後に渡邊は自らメディアに向けてこう挨拶した。「本当に今シーズンもたくさんの方々に取材をしていただいて、本当に僕がこうしてやっているのを日本の方に知っていただけるのは、皆さんに僕が取材していただけているおかげなので、今日も朝からたくさんの方に集まっていただけて感謝しています。今後もバスケット選手としても人としても成長して、もっと取材したいと思っていただける選手になりたいと思っています」

NBAというバスケット界最高峰の舞台で戦う日々の努力やプレー面のことだけでなく、あらためて渡邊の人柄も表れた会見となった。