NBA

チーム戦術に合わせたプレーをするオールラウンダーが多数

今シーズンのルーキーはドラフト1位から10位までの8人がスターターに名を連ね、残りの2人もローテーションの一角として活躍しています。上位指名とはいえ、ここまで成功しているシーズンは珍しく、個々の質の高さだけでなく、チーム事情にフィットしたドラフト指名になりました。誰もが活躍する中で新人王争いも激化しています。

まず、飛び出したのは3位指名のエバン・モブリーで、低迷していたキャバリアーズが急浮上するキーマンになりました。ビッグマンを多く並べるチーム事情の中で線の細いモブリーは苦しむかと思われましたが、キャブスに不足していたインサイドのプレーメイカーとしてビッグマンの要になると共に、ディフェンスでもフィジカルの弱さを補って余りある読みの良さでパスコースを塞いでいきます。ルーキーで最も多い8.3リバウンドと1.7ブロックショットが光っており、チームを躍進させた事も含めて、初めに東カンファレンスの月間新人王に選ばれました。

西カンファレンスの月間新人王は4カ月連続でサンダーのジョシュ・ギディが選ばれました。ルーキー最多の6.4アシストが示す通り、イマジネーション溢れるプレーメイクと魅力的なパスセンスを持ち、若くてエネルギー溢れるサンダーの起点役として定着しました。リバウンドにも強く、トランジションに持ち込んでチャンスを演出し続けており、チームがリーグ最低のフィールドゴール成功率でなければ、ギディのアシスト数はもっと多かったでしょう。アメリカでのプレー経験がない中で、いきなりNBAで結果を残しているだけに、伸びしろもたっぷりと残されています。

12月になってこの2人を上回るプレーを見せたのがマジックのフランツ・ワグナーでした。万能なウイングのワグナーは、オフボールで合わせることも出来れば、ハンドラーとしてプレーメイクもこなし、アウトサイドでもインサイドでも得点する武器を持っています。ディフェンスとの駆け引きをしながら、タイミングをずらして自分のシュートポイントを見つける上手さが光ります。若手の多いマジックでは思うようにパスが来ないこともありますが、様々な形で点を取ることでチームで2番目の得点源として活躍しています。

再建チームの中心選手として迎えられた選手と違い、スコッティ・バーンズはオールスター選手を擁するラプターズに加わったため、より高い完成度を求められています。試合展開に応じて様々な形に変化していくラプターズの戦術に戸惑う面はあるものの、長い手足を生かしたインサイドプレーの上手さで攻守に貢献しています。特にショートレンジのフィニッシュの正確性は際立っており、激しいコンタクトプレーの中で適当に投げているように見えるシュートフォームでも指先のコントロールが効いているため、しっかりと押し込んでいます。勝つためのプレーが求められる環境で結果を残しているのは他の選手にはない魅力です。

開幕時のケガもあり出遅れていたものの、大本命のドラフト1位ケイド・カニングハムは次第に調子を上げ、平均16.9点でルーキーで最多得点を誇るだけでなく、アシスト2位、リバウンド4位、スティール5位とオールラウンダーの凄みを魅せています。そしてこのスタッツ以上に存在感のあるプレーと強いリーダーシップを発揮し、ピストンズを完全に『カニングハムのチーム』へと変えてしまいました。コートを俯瞰的に観ているかのように選手全体の動きを把握し、オフェンスでは空いているゾーンを的確に利用し、ディフェンスでは高い危機察知能力でピンチの芽を潰しに行きます。シュート力をはじめとし、個人能力には課題が大きいものの、ルーキー離れした支配力は驚異的です。

これだけ多くのルーキーが活躍しているのは、単に個人能力が高いだけではなく、チームの戦術に合わせたプレーをするオールラウンダーが多いことが関係しています。求められる役割を柔軟にこなせるだけの戦術理解力も持ち合わせている選手が多く、ルーキーらしくないプレーが多く見られます。それだけに新人王争いも個人スタッツだけでなく、チームへの貢献度も加味したくなり、誰が選ばれるのかわかりません。シーズン最後までルーキーたちの競争が続きそうです。