トーマス・ウィスマン

文=鈴木栄一 写真=B.LEAGUE

日本有数の大都市である横浜をホームタウンとし、観客動員もリーグ上位。ビッグクラブになれる条件は整っているのだが、横浜ビー・コルセアーズはBリーグのスタートから2年連続で残留プレーオフに回り、辛うじてB1に踏み止まっている。この悪い流れを断ち切り、V字回復へと転換すべく、今オフには大幅なチーム改革を行い、昨シーズンにはアドバイザー役だったトーマス・ウィスマンを新ヘッドコーチに据えている。栃木ブレックスを初代王者へと導いた指揮官は、横浜を下位チームから脱却させ、チャンピオンシップ出場へと引き上げる任務を担う。

「若手を育てると同時に、すべての試合に勝ちにいく」

──まずは今夏のチーム編成について教えてください。選手の多くが入れ替わりましたが、日本人選手は若手ばかり獲得しました。それは計画していたものですか。

将来性を考慮したメンバー構成にしたかったのです。昨シーズンはベテランが目立っていたので、今オフは主に若い選手の獲得に動きました。上位チームのような資金力はなく、即戦力で一気に強化できるわけではないので、若手を成長させていくことが重要になります。私の得意とするところですし、長期的な視線に立ったチーム作りに携わることで、若返った気分になれます。

今のチームは、ベテランと若手をうまく融合できているし、良いケミストリーを作れていると感じます。ケミストリーはポシティブな雰囲気をもたらし、チームの成長に繋がります。若手は経験を積ませて育てていく予定ですが、彼らは自分のパフォーマンスに責任を持ち、プレッシャーを感じないといけない。私は若手を育てると同時に、すべての試合に勝ちにいくつもりです。

──新戦力ではエドワード・モリス選手を帰化選手として開幕から起用できますね。

日本人のサイズアップは重要で、開幕前にモリスの帰化が認可されたことは大きいです。ただ、外国籍選手の試合登録は2名のみで、交代要員はいません。昨シーズン以上に過密日程で、モリスの帰化があってもコーチとして選手をやりくりするのは大変だと感じています。チームとしてのスタミナを考慮し、いかにケガなく過ごせるのかが重要になってきます。

──コーチの右腕として加入したスキルコーチのフェス・アービンについては?

素晴らしいスキルコーチです。栃木でアルフレッド・アボヤを獲得した際に知り合い、そこで彼の仕事に感銘を受けました。カタール代表のヘッドコーチを務めた時は一緒に仕事をしており、日本に連れてきたいと思っていました。今回、彼が加わってくれたことは幸運です。

トーマス・ウィスマン

「目標をどんどん上方修正していくつもり」

──現時点でチーム強化のどの部分を重視していますか?

オフェンスについては大きく改善しました。得点力のある選手が増えたことで昨シーズンよりもスムーズにできています。それだけに、今はディフェンスにより力を入れていきたい。中でも『ディフェンススコア』、つまり得点チャンスを作り出す守備を強化していきたいです。

オールコートで積極的に仕掛けていけるチームにするため、機動力のある選手を獲得しました。外国籍選手も同じで、複数のポジションをこなせることと、特に守備面での機動力を重視しています。私はすべての選手に攻守で良いプレーを求めます。得点を取ればディフェンスはムラがあっても良いわけではありません。特に若い選手は、守備が安定することでオフェンスにも自信を持ってプレーできるようになってくると思っています。

──山田謙治や蒲谷正之といった、チーム誕生時から在籍した地元出身のベテランがチームを去りました。彼らに変わる新たなチームリーダーとして期待したい選手は誰ですか?

(細谷)将司、アレックス(湊谷安玲久司朱)がキャプテンを務めますが、リーダーは常にコートにいなければいけないので、彼らに頼らずグループでリーダーシップを取っていくべきだと思っています。これはチーム作りにおける一つのチャレンジになります。

──栃木での優勝に続き、今回は横浜の立て直しという新しい挑戦となります。ヘッドコーチとして1年のブランクがあることを含め、緊張している部分はありますか。また、古巣である栃木との対戦を意識しますか。

ナーバスになるには年齢を取りすぎていますね(笑)。新しい挑戦にただ興奮しています。コーチとは常に自分の力を証明しなければいけない職業で、一つのチームで実績を作ったら、また別のところで実績を残さないといけない。これがプロコーチの人生というものです。残留プレーオフからステップアップしようとする横浜の助けになりたいと思っています。

私のように長くコーチをやっていれば、いろいろなことが起きます。古巣の栃木が相手だからと言って、特別な感情を抱くことはありません。すべての相手に対して同じモチベーションを持って、試合に勝ちにいくだけです。

──最後に今シーズンへの意気込みと、ファンへのメッセージをお願いします。

まずは残留プレーオフに行かないようにすること。そこから目標をどんどん上方修正していくつもりです。ただ、選手に過度なプレッシャーを与えたくはありません。しっかりプロセスを積んで行くことを重視します。

横浜のファンは本当に素晴らしく、下位に沈んでいる時でも熱心にサポートしてくれています。それに横浜という都市は、クラブがさらに成長するために打ってつけの環境にあります。より競争力を持ち、ファンにもっと誇りに思ってもらえるチームにしていく。それが私の目標です。

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