比江島慎

比江島のアタックから生まれたオフェンスリバウンドの機会

宇都宮ブレックスは3月2日、サンロッカーズ渋谷をホームに迎えたリーグ再開初戦を68-64で競り勝った。この試合、宇都宮は安齋竜三ヘッドコーチ、佐々宜央アシスタントコーチがともに不在で、町田洋介ヘッドコーチ代行で試合に臨む非常事態だった。しかし、チームの根幹である激しいディフェンスを粘り強く続け、チャンピオンシップ出場を争うライバルとの直接対決で価値ある勝利を挙げた。

この試合、比江島慎は21分31秒の出場で14得点4アシスト4スティールと攻守に渡ってチームを支えた。特に立ち上がり、SR渋谷の激しいプレッシャーディフェンスに苦しんでターンオーバーを連発し、いきなり10点を連取される最悪のスタートとなったが、ここで比江島が連続得点を挙げることで嫌な流れを断ち切った。また、第3クォーターにはSR渋谷が盛實海翔の活躍で突き放そうとする中、比江島らしい非凡な個人技で得点し、試合の主導権を相手に渡さない貴重な働きを見せた。

また、シュートが入らない時でも、強気に攻めることで宇都宮のオフェンスリバウンド奪取に貢献していた。敵将の伊佐勉は語る。「比江島君にズレを作られてしまいました。彼はシュートを後半は何本か外しましたが、こちらが2人で抑えながら放ったシュートだったので落ちても僕たちがリバウンドに行くのが遅れてしまう。それもあってオフェンスリバウンドを取られてしまった印象です」

エースに相応しいプレーを見せた比江島は、こう振り返る。「出だしで相手が激しく来るのは分かっていましたし、ダブルチームに来るのも予測はしていましたが、自分たちが準備してきたものを相手に封じられてバタバタしてしまいました。でも試合の中で修正し、プレーしながら感覚を取り戻せていきました」

また、試合後には満面の笑みでガッツポーズを見せるなど、感情を爆発させていた点について聞かれると次のように続けた。「難しい状況というか、コーチ陣はマッチ(町田)さん1人で、(竹内)公輔さんもいない中、東地区で争っているSR渋谷に勝てたことはうれしかったです。その喜びが現れたと思います」

比江島慎

「こういう展開を勝っていくことでチーム力を高めていける」

指揮官不在という難しい状況に加え、宇都宮は勝負の第4クォーターで3ポイントシュートを9本すべて失敗、フリースローも7本中2本の成功のみと、全くシュートが入らなかった。それでもこのクォーターだけで6つのスティールを奪い、7つのオフェンスリバウンドをもぎ取るなど最後までボールへの激しい執着心をキープしたことが勝利に繋がった。今シーズンここまで宇都宮は、ともに連敗を喫した開幕節の群馬クレインサンダーズ戦、12月11日、12日の琉球ゴールデンキングス戦など終盤までもつれた接戦を落とすことが続いていた。だからこそ、この展開で勝てたことは宇都宮にとって大きな意味がある。

比江島は言う。「これだけターンオーバーが多く、負け試合になってもおかしくない中で、しっかり我慢して相手のターンオーバーを誘い、リバウンドも試合中に修正できました。3ポイントシュートが入らなかったのは課題で、もっと個人の能力を高めないといけないと思います。ただ、今シーズンは接戦の勝率が良くない中、ここで勝てたのは自信にしていいですし、プラスにとらえたい。こういう展開を勝っていくことでチーム力を高めていけると思います」

これからはコロナ禍によって延期となった試合を少しでも消化するため、水曜、週末と続く過密日程がスタートする。ただ、それ故に比江島は、チームで戦う宇都宮のアドバンテージにもなると見ている。

「タイムシェアをして、コートに出ている時は120%のエナジーを出すのがブレックスのスタイルです。一人ひとりがチームでやることを意識し、ベンチに入っている全員が試合に絡むチームです。疲れは溜まってきますが、チーム一丸となっていきたいです」

そして、今のチーム、自身の状態に確固たる手応えを得ている。「正直、オフェンスではもっと改善したいですが、ディフェンスで我慢してしっかりやれているのはすごく良い状態だと思います。個人的にもすごくコンディションが上がってきています」

宇都宮が激戦の東地区にあってここから順位を上げていくには、やはり比江島の活躍が不可欠となる。それをあらためて感じさせてくれるリーグ再開初戦のパフォーマンスだった。