ヤニス・アデトクンボ

「自分が成長できるかが大事であって、僕はまた優勝したい」

2020-21シーズンの王者バックスは、レギュラーシーズン60試合を終えて36勝24敗で東カンファレンス3位につけているが、話題に上ることは少ない。

今シーズンの優勝候補筆頭でもなく、シーズン中の大型補強を実行したわけでもない。同カンファレンスで今最も注目を集めているのは、ジェームズ・ハーデンを獲得したばかりのセブンティシクサーズで、バックスの連覇の可能性について伝えるメディアの数は多いとは言えない。

エースのヤニス・アデトクンボは『ESPN』とのインタビューで、王者でありながら話題の中心から外れていることを聞かれると「誰も僕たちのことを気にしていないから」と笑った。「ウチのフランチャイズはミルウォーキーという小規模な市場だし、注目度も低い。僕たちは自分たちの仕事を全うするだけさ。チームの勝利のために必要なことをして、家族を大切にして、試合を楽しむ。勝つためにやらないといけないことをやるまでだよ」

今シーズンのバックスは、ビッグ3のアデトクンボ、クリス・ミドルトン、ドリュー・ホリデーが健康安全プロトコルにより欠場した試合が多く、ここまで51試合以上に出場している選手はパット・カナートン(54試合)とボビー・ポーティス(51試合)しかいない。それでも大崩れすることなく東の上位をキープできているのは、連覇できるだけのチーム力があるということだ。

「もし、今の状態ですぐにプレーオフが開幕しても優勝できると思う?」という問いに、アデトクンボは「可能だね」と答えた。「優勝が可能なチームと思われたいし、チームとして良いプレーをしたい。それができれば、NBAファイナルに勝ち上がれる」

昨シーズンの優勝により、追う側から追われる側へと変わったとはいえ、アデトクンボの姿勢は変わっていない。「過去のことは考えないようにしている。今が大事だからね」と彼は言う。「他チームがウチとの対戦を楽しみにしていて、ミルウォーキーでの試合で『やっつけてやる!』と闘志を燃やすのも理解できる。それでも、詰まるところは自分が成長できるかが大事であって、僕はまた優勝したい」

昨年末に腰の手術を受けたブルック・ロペスがシーズン中に復帰できるかは未知数のため、バックスはトレードデッドラインまでに4チーム間(ピストンズ、キングス、クリッパーズ)トレードでベテランのサージ・イバカを獲得した。全盛期と比べれば衰えが見られるとはいえ、ラプターズ時代に優勝経験があり、リバウンドとディフェンスが健在のベテランは大きな戦力になる。

ハーデンとジョエル・エンビードのデュオが誕生したシクサーズ、ベン・シモンズの獲得で巻き返しを図りたいネッツ、レブロン・ジェームズ頼みで不協和音が発生しつつあるレイカーズがNBAトピックスを賑わせるとしても、淡々とインタビューに答えたアデトクンボのように、王者バックスは連覇に向けて静かに闘志を燃やしている。