女子日本代表

文=丸山素行 写真=FIBA.com

トランジションオフェンスが機能し、前半で2桁リード

ワールドカップ第3戦、女子日本代表はここまで2敗のプエルトリコの執念に苦しめられるも、69-61で退けて、グループリーグを2勝1敗として勝ち抜けを決めた。

日本の先発は本橋菜子、藤髙三佳、宮澤夕貴、馬瓜エブリン、髙田真希の5人。髙田の3ポイントシュートで先制した日本は、トランジションオフェンスが機能するようになると勢いを増していく。ボールをプッシュしアウトナンバーを作り、髙田の3点プレーとなるバスケット・カウント、水島沙紀の3ポイントシュートが飛び出し、第1クォーターを終えて23-15と8点をリードした。

だが第2クォーターに入ると、プエルトリコに思わぬ反撃を受ける。プエルトリコはここまで2戦の3ポイントシュート成功率が4%と不得意で、日本は外角からのシュートをあえて打たせていたが、これが徐々に決まり始めたことで流れを失い、ゾーンディフェンスにも苦しめられた。

それでも、4点差まで詰め寄られた悪い流れを、町田瑠唯が断ち切る。途中出場の町田は素早いパス回しでゾーンを揺さぶり、目線のフェイントでノーマークを作り出す。ゾーンディフェンスを攻略したことでリズムが生まれた日本は、町田がパスカットからワンマン速攻をお膳立てするなど、トランジションオフェンスが復活。次々と速攻を繰り出し、48-35とリードを広げて前半を折り返した。

女子日本代表

追撃を許すも髙田、宮澤の奮闘で逃げ切る

本橋の連続得点、藤髙の3ポイントシュートが決まり、日本は後半開始2分で19点のリードを奪った。だがこの楽勝ムードが集中力を削ぐことになり、フィニッシュが決まらないことでプエルトリコに反撃の機会を与えてしまう。プエルトリコは積極性を失わず、オーバーヘルプなど日本のゾーンディフェンスのミスを逃さずに点差を縮めていく。これでリズムを崩した日本はシュートが決まらなくなり、第3クォーターの約7分間で2点しか奪えず停滞する。

それでも最終クォーターに入ると、ボールと人が連動するオフェンスやトランジションオフェンスが蘇った。宮澤が粘って確保したディフェンスリバウンドからの速攻で生まれた馬瓜の4点プレーで勢いに乗り、宮澤と髙田の連携プレーで要所を締めた日本は10点前後の点差を保ち続ける。1勝を目指して勇敢に戦い続けるプエルトリコの勢いに押され、ターンオーバーからの失点を喫するなど最後まで粘られたが、最終スコア69-61で逃げ切った。

34分半の出場となった宮澤は、いずれもチームハイとなる15得点と14リバウンドのダブル・ダブルを記録。3ポイントシュートは13本中3本成功と必ずしもシュートタッチは良くなかったが、トランジションオフェンスを生み出す14リバウンドは勝利を決定づける価値があった。また髙田は37分間のプレーで14得点を記録し、大黒柱としての重責を果たした。また第2クォーターの悪い流れを変えた町田は、わずか8分間の出場で7アシストと脅威的な数字を残し、ケガで大会前半戦は出遅れたが復活の気配を見せている。

他の試合の結果次第ではあるが、グループリーグ2位以上は確定。それでもヘッドコーチのトム・ホーバスは「ひとまず勝ちました」と言うものの、その表情は固い。「髙田と宮澤はすごく良いバスケをやっているけど、周りの選手がまだステップアップしなければ難しい」と指揮官。万全ではない選手がコンディションを整えるとは別に、今の若いチームでは選手それぞれが大会期間中にステップアップすることが求められる。

女子バスケットボールワールドカップ 日本代表選手12名

0 長岡萌映子(SF / トヨタ自動車アンテロープス)
1 藤岡麻菜美(PG / JX-ENEOSサンフラワーズ)
7 水島沙紀(SG / トヨタ自動車アンテロープス)
8 髙田真希(PF / デンソーアイリス)
13 町田瑠唯(PG / 富士通レッドウェーブ)
15 本橋菜子(PG / 東京羽田ヴィッキーズ)
24 藤髙三佳(SG / トヨタ自動車アンテロープス)
30 馬瓜エブリン(SF / トヨタ自動車アンテロープス)
41 根本葉瑠乃(SG / 三菱電機コアラーズ)
52 宮澤夕貴(SF / JX-ENEOSサンフラワーズ)
88 赤穂ひまわり(SG / デンソーアイリス)
99 オコエ桃仁花(SF / デンソーアイリス)
[ヘッドコーチ]トム・ホーバス