ケンバとフォーニエはチームの弱点を補うとともに、特長を変えるリスクも
昨シーズンは41勝31敗と7年ぶりの勝ち越しに成功し、同じく7年ぶりにプレーオフ進出と躍進を果たしたニックスは、ケンバ・ウォーカーとエバン・フォーニエを新たに加える大型補強に成功しました。東カンファレンス4位のチームにオールスターガードと銀メダルチームのエースが加われば、一気にトップチームの仲間入りを期待したくなります。しかし、各チームのGMのアンケートによる『東カンファレンスのトップ7』には名前が出ず、まだまだ安定して結果を残すと思われるほどには信頼されていません。
ニックスが成功を収めた理由は時代の流れに反したスタイルにありました。平均107.0得点はリーグ26位と下位に沈んでおり、リーグで4番目に少ない3ポイントシュートと7番目に多いミドルシュートは得点効率が良いとは到底言えないものです。しかし、3ポイントとトランジションの傾向が強まった中で、逆に空きやすくなったミドルレンジを活用するチームは増えており、ニックスも上手くディフェンスの隙を突いたことが、効率は悪くても手堅く得点するオフェンスに繋がりました。
一方でリーグ最少の104.7失点というディフェンスは、被3ポイントシュート確率を33.7%というリーグトップの数字に抑えたことが効いており、現代オフェンスで守るべきセオリーを抑えています。また堅実なオフェンスは相手のカウンターの機会を減らすことにもなり、速攻での失点はリーグで2番目に少ない10.5点に抑えました。相手の3ポイントシュートとトランジションを抑えたことが素晴らしいディフェンスに繋がったのです。
この堅守を維持し、そこにケンバとフォーニエのオフェンス力が加われば、勝率が上がると考えるのが普通です。しかし、見えにくい問題として、プルアップ3ポイントを活用して得点する2人だけにオフェンスの形が変わってしまい、しかもトランジションディフェンスに弱点を抱えてもいます。ニックスの弱みを補う2人ですが、それは特長を変えてしまうリスクも持っています。
それでもオフェンス力アップは上位進出には欠かせない要素であり、オールスターになったジュリアス・ランドルをインサイドの要に、アウトサイドから射抜くケンバとフォーニエが加わったのだから、オフェンスの可能性は大きく広がりました。再建で若手を集めていた時期に比べて、即戦力を中心にした補強が効いており、戦力が整ってきています。
次のステップは『プレーオフで勝てるチーム』への成長ですが、ネッツやバックスといった東カンファレンスの上位相手には、チームディフェンスではなく個人で相手エースを制することも重要になります。これまでレジー・ブロックが担っていた役割は、3年目のRJ・バレットに引き継がれることが有力で、フィジカルと208cmのウイングスパンを生かして、スーパースターに対してハードな戦いを挑むことが期待されます。
補強によってオフェンス力が向上する中、ディフェンス力ではバレットがエースキラーへと成長すること。これがニックスが躍進を続けるためのキーポイントになりそうです。