篠山竜青

文・写真=鈴木栄一

「いつになったら余裕が出るのか、自信を深められるのか」

ワールドカップアジア予選の2次ラウンド、この9月に行われるWindow4の予備登録メンバーには、篠山竜青が順当に選出されている。持ち味のガッツ溢れるハッスルプレーとタフな守備で、オーストラリア相手の大番狂わせに貢献したのは記憶に新しい。富樫勇樹とともに代表のポイントガードとして確固たるポジションを確立した印象が強い。

しかし、篠山本人は自分が代表において出場機会を保証された、もしくは12名の登録メンバーに入ることが保証されているとの意識は全くない。「ガードはいくらでも人がいますし、今回は(ベンドラメ)礼生も入ってきています。いつも危機感ばっかりです」と篠山は言う。

篠山は堅実なゲームメークも抜群のリーダーシップも備えた、完成されたポイントガードなのだが、本人によれば「これだけは他人に負けない、というのも実は特にあまりないです」とのこと。「とにかく1回1回の練習が勝負、1試合1試合が最後の試合になるかもしれないという気持ちで臨まないと、生き残っていけないと思っています。いつになったら余裕が出るのか、自信を深められるのか、それは分からないです。いつも危機感でいっぱいです」

このように『危機感』を繰り返し語る篠山は、Window3が終わってからの約2カ月、さらなる成長のために細部にまでこだわったトレーニングを行っている。「めちゃくちゃ細かいことで言うと股関節の可動域や、スタンスの部分について意識して取り組んでいます。オフェンスにしてもディフェンスにしても、悪い時はスタンスが狭くなり前傾になってしまうので、常に広いスタンスを保って上体を起こしたまま、姿勢を良くしてプレーすることです」

その成果については「ちょっとずつ出てきていると思います」と好感触を得ている。「特にディフェンスに関しては、富樫相手の1対1でまだまだ抜かれたりしていますが、一歩目の出る感覚が良くなってきている実感はあります。姿勢の改善によっていろんな部分で楽に動けたりなど、手応えはある程度あります」

篠山竜青

「考えながらプレーするのが、自分がやるべきこと」

Window3でチームに加わった八村塁とニック・ファジーカスに加え、今回は渡邊雄太が合流。日本代表の層は一気に厚くなっている。だからこそ、この豊富なオプションを生かすためには、司令塔のゲームメークがより重要となる。

「誰と出ているかによりますが、例えば比江島(慎)や(田中)大貴などピック&ロールを使って起点になれるウィングがいるのであれば、彼らにどんどんやらせるのが自分の仕事です。逆に辻(直人)のようなシューターがウィングにいるのであれば、自分がピック&ロールを使って起点とならなければならないと思います。他にもその時のメンバーだけでなく、相手のディフェンスの強み弱みもあります。その場その場の状況で自分がやるべきことをしっかり判断して、ボールを持つ方がいいのか、離した方がいいのかも含めて考えながらプレーするのが、自分がやるべきことです」

『自分は代表の常連』と感じてもおかしくはない立場のベテランが、そういった気持ちには一切ならず貪欲に進歩を目指している。これもチームの活性化を促進する大事な要素。コート内外において、代表での存在感を確実に高めている篠山の奮闘もWindow4の大きな楽しみだ。

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