上の写真:青山学院大学のヘッドコーチを務める廣瀬昌也氏
幾度となく看板をすり替えてきただけで、好転することがなかった日本のバスケットボールリーグ。今度こそ本気で変える使命を担うのがBリーグであり、日本バスケ界の発展に向けた最後の砦がまもなく開幕を迎える。ファンや選手たちはもちろんだが、歴史を紡いできた先人たちも、この新しいリーグに期待を寄せている。
10数年前に描いていた夢のような環境がこれから広がる
熊谷組ブルーインズと大和証券ホットブリザーズでプレーしていた廣瀬昌也氏は、いずれも不況の煽りを受け、休部に追い込まれる苦い経験をしてきた。その後、新潟アルビレックスBBが誕生し、初代プロヘッドコーチとしてJBLとbjリーグの両方を経験。ようやく一つとなったプロリーグの誕生を心待ちにしている。
「私が現役の時は、マイケル・ジョーダンとスラムダンク人気に沸いており、プロリーグができるきっかけはありましたし、そういう声も挙がってました。ただ、いろんな理由でまとまらなかった。2度の休部を経験した上で新潟に行った意義は大きく、やっぱりプロリーグやプロチームを作ることはバスケットをメジャーにするための礎であり、一歩として必要なことでした。今回、Bリーグとして大きなプロリーグができることは、10数年前に描いていた夢のような環境がこれから広がるんだといううれしい思いがありますね」
技術的にレベルが高いリーグであることは絶対
東芝レッドサンダーズ(現川崎ブレイブサンダース)の選手として1部昇格の原動力となり、ヘッドコーチ時代は優勝に導いた吉田健司氏。期待しているからこそ、プロとしての正しい方向性を求めている。
「技術的にレベルが高いリーグであることは絶対です。プロとは何なのか。プロ選手になることが目的ではなく、その中でどれだけ活躍できるかが重要。『活躍=評価』であり、それに対する対価としてお金を稼ぐのがプロだと思います」
住友金属スパークスでプレーし、日本代表の大型シューターの先駆者でもある池内泰明氏もまた、プロとして見合ったバスケットのレベルを重要視する。
「プロになってからも良いバスケットを追究し、多くの方に見てもらえるような楽しいバスケットをするための努力は続けてほしいです。チーム数が多くなりましたので、それだけ下から選手たちが吸い上げられていきます。気持ちはプロでもバスケットのレベルが伴わないのようにならないような努力が必要です」
選手たちのやり甲斐を引き出すクラブ運営
2シーズン前まで栃木ブレックスでプレーしていた網野友雄氏は、今もアンバサダーとしてクラブに関わっている。
「栃木で4年間プレーさせてもらいましたが、ブレックスの環境や地域密着度は国内でもかなり高いレベルにあります。選手たちはプロとして生活を懸けてプレーしているわけですが、それにプラスしてやり甲斐が引き上がってほしいです。やり甲斐だけあっても生活はできなかったり、逆にお金だけあってもやり甲斐がなければ、プロとしては限界が来てしまいます。その辺のバランスが取れたクラブがどんどん増えていくことが好ましいです。選手の努力が大前提にありますが、やはり運営する側の努力も欠かせません。良いクラブ運営ができる人が増えていってもらいたいです」
選手に求めるだけではなく、運営や経営も『プロ化』する。これこそがBリーグ成功の近道でもある。
選手やコーチ、アンバサダーと様々な形でリーグやクラブと接してきたOBたちが求める理想像は的確だ。引退後はバスケットボール界を俯瞰して見てきたことで、クラブに足りない点を補う良きアドバイザーとしても必要な存在である。
新たに始まるBリーグはこれから歴史を作っていく。しかし、参戦するクラブたちは長短はあれど着実に年月を積み重ねてきた。様々な形でOBをプロの舞台に引っ張り出していくことが、これまで応援し続けてくれたファンにとってはうれしいく、新たなるファンにとってはその歴史が信頼につながるだろう。
Bリーグには過去10年に渡って分断されてしまったバスケットの歴史を、もう一度つなぐ役割としても期待したい。
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