Bリーグはレギュラーシーズンの3分の2を消化したところで中止となった。これからポストシーズンに向けて緊張感が高まる状況で急に試合がなくなったことで、選手たちはモチベーションを向ける先を失い、気落ちしているに違いない。特に、今シーズンに調子を上げていた選手はなおさらだ。ここではプレータイムを指標として、今シーズンに大きなステップアップを見せていた選手のパフォーマンスを振り返る。
スランプも乗り越え、リーグ屈指のシューターに
青山学院大出身の前田悟は昨シーズンに特別指定選手として富山グラウジーズに入団した。勝敗が決した後の限られた時間ではあったものの、7試合に出場し3ポイントシュート成功率は45.5%を記録するなど、非凡なシュートセンスを見せた。
そして本契約を結んで迎えた今シーズン、開幕戦でいきなり4本の3ポイントシュートを含む22得点を挙げて存在感を示すと、8試合目から先発に定着。41試合すべてに出場し、平均27.4分、11.5得点と富山に欠かせない得点源となった。190cmの長身に加え、思い切り良く放つ3ポイントシュートは最大の武器となり、成功率は39.9%を記録した。
富山は大黒柱のジョシュア・スミスが右膝蓋腱断裂の大ケガを負い、わずか4試合の出場で戦線を離脱すると、そこから勝てない期間が続いた。それでも、アイザック・バッツの加入でインサイドの強化に成功した富山は、中地区3位でシーズンをフィニッシュ。2位のシーホース三河とは1ゲーム差と、チャンピオンシップ進出に手が届く位置につけられたのは、前田の活躍があってこそと言える。
順風満帆に見えた前田だが、1月22日の新潟アルビレックスBB戦では6本すべてのフィールドゴールを失敗し、今シーズン初の無得点に終わった。そして、中2日で行われたアルバルク東京との第1戦でも2得点に抑えられ、初めての挫折を味わった。「0得点は今シーズン始まってから初めてだったので。なかなか自分のタイミングでシュートを打てないし、なんなんだろうって悩みました」
それでも、チームメートの宇都直輝からのアドバイスで吹っ切れた前田は、翌日の第2戦で19得点を記録。試合には敗れたものの、A東京を指揮するルカ・パヴィチェヴィッチに「前田を乗せてしまった」と言わしめ、スランプを脱却した。
富山のドナルド・ベックヘッドコーチも「素晴らしい若手であり、ウチのベスト3ポイントシューター」と、前田を称賛し、その後はコンスタントに2桁得点を重ねシーズンを終えた。
得点は日本人選手で8位、3ポイントシュートの成功率と成功数がともに6位と、素晴らしい数字を残した前田。単発で大活躍を見せる新人選手は多数いるが、シーズンを通して高値安定したパフォーマンスを続け、インパクトを与えた新人選手は前田以外にいないだろう。新人賞当確と言ってもいのではないだろうか。
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