ワンマンチームからの脱却がサンダー浮上のカギに
サンダーはビクター・オラディポ、ドマンタス・サボニスと交換で、ペイサーズからポール・ジョージを獲得。正式発表はモラトリアム(猶予)期間が終わる7月6日の午前0時1分以降になるが、またも西カンファレンスで大型移籍が実現することになった。
2017年のシーズンMVPに輝いた『ミスター・トリプル・ダブル』ことラッセル・ウェストブルック、そしてリーグ屈指の攻守に優れるジョージによるデュオが誕生することで、サンダーは再び西カンファレンスの強豪へと返り咲くことだろう。
トレードが報道されて以降、巷では、『唯我独尊』タイプのウェストブルックとジョージの共存は難しいのではないかと言われている。確かに、チームを引っ張ってきたスター同士の連携がスムーズにいかない例は少なくない。だがむしろ、ジョージの加入でウェストブルックの負担が相当に軽減されるとの考えもある。
ジョージが優れている点は、オフェンス時には相手のチャージを誘うことができ、ディフェンス時には複数のポジションを守れること。攻守両面であらゆる状況に対応できるため、ウェストブルックがオフェンスに専念できる場面が増えるだろう。
ポイントガードというポジション上、ウェストブルックがボールを保持する時間は多くなる。もしジョージが同様にボールを持ちたがる傾向が強ければ、共存は難しいかもしれない。しかしジョージは、スポットアップなどオフ・ザ・ボールの動きも得意で、昨シーズンはキャッチ&シュートからリーグ3位となる1試合平均7.4得点を挙げている。ペイサーズ時代にはウェストブルックのように相手ディフェンスの注意を引くことができる司令塔がいなかったにもかかわらず、これだけの数字を残せたのだから、新たな相棒とのプレーではジョージのこの持ち味が大いに発揮されるはずだ。
ウェストブルックは、昨シーズンはアイソレーションからリーグ2位の平均6.0得点を決めているが、自分に勝る攻撃オプションがいなかった、そして出したパスから得点が生まれる可能性が低かった、というチーム事情もあった。ファウルで止めるしか手立てがないドライブが武器のウェストブルックに、自らスペースを見つけて3ポイントライン手前で待ち構えられるジョージが加わる以上、対戦相手はウェストブルックだけに集中できなくなる。当然、ウェストブルックからジョージへのキックアウトという攻撃パターンは、相手にとって脅威になる。
昨シーズンのサンダーは、良くも悪くもウェストブルックの『ワンマンチーム』だった。昨シーズンの試合でコートに出ていた間、チームプレーの約41%がウェストブルックを経由して生み出されたのだが、これでは長いシーズンを戦う上で、どうても疲労が蓄積されてしまう。最終的にオスカー・ロバートソン以来となる史上2人目の『平均トリプル・ダブル』を達成し、1シーズンでの年間トリプル・ダブル達成回数でも42回という新記録を樹立。また、ロケッツとのプレーオフ1回戦でも3試合でトリプル・ダブルを達成できたのも、人間離れしたスタミナを持つウェストブルックだから。
とはいえ、昨シーズンと同様のパフォーマンスを何年も維持できるとは到底考えられない。ケガなくフル回転して1シーズンを乗り切ったのは運が良かったとも言える。それでもプレーオフ進出がやっとのチーム、というのが昨シーズンのサンダーだった。それだけに、ここにジョージが加わる意味は大きい。
いろいろと意見は出てくるだろうが、ケビン・デュラントとのデュオを超えられる可能性さえ秘めている、ウェストブルック&ジョージの新コンビに注目したい。