
「オフコートのところも見て、みんないろいろな特徴があると思いました」
7月3日、男子日本代表は『FIBAワールドカップ2027アジア予選』Window3でアジアバスケットボール界屈指の強豪・中国相手にアウェーで92-73と歴史的な勝利を挙げた。この1勝は桶谷大ヘッドコーチ体制にとって発足当初から掲げる、『最強の布陣で最高の一体感』というテーマが正しい方向性であることを証明した。
今回の試合に向けた強化合宿では、複数の若手選手をディベロップメントキャンプからコールアップした。先を見据え、ここで若手を12名のロスターに入れ経験を積ませることも一つの選択だった。しかし、このWindow3で中国、韓国相手に連敗すると、1次ラウンドで予選敗退する可能性もあった状況で、指揮官はベストメンバーにこだわった。「今、中国に勝つために最良のメンバーを選んだつもりです。アウェーということで、かなりタフな状況となります。その中でも混乱せずにプレーするため経験のある選手をより多く選びました」
このベストメンバーは、最高の一体感を生み出すためにプレー面以外のところも加味して選ばれた。桶谷ヘッドコーチは、コート外の振る舞いも含めた上での選考だったと明かす。「前回のWindow2では、プレーしなくてもベンチにいるだけで必要だなという選手が何人かいました。もちろんコート上でしっかりプレーすることは必要です。ただ、今回の合宿を通じてプレーだけではない、オフコートのところも見てどういう選手なのか、みんないろいろな特徴があると思いました」
さらにこの最強の布陣と最高の一体感を実現するため、今の代表が押し出しているのがスタッフの多さだ。まとめ役の桶谷ヘッドコーチ、オフェンス担当のライアン・リッチマン、ディフェンス担当の吉本泰輔の中心トリオ以外に加え、Bリーグで指揮を執っている藤田弘輝、森高大など多くのコーチが参加している。桶谷ヘッドコーチは「コーチ陣が多くいることで、一人ひとりの選手たちに対してワークアウトやシューティングなどしっかり見ることができます。これは選手たちにとって大切で良い環境を与えられていると思います」と、充実したスタッフ陣のもたらす効果を語る。

「1番、2番ポジションのところでハンドラーをしっかり置く」
そして迎えた中国戦。前回のWindow2で前半の2桁リードを守りきれず逆転負けした教訓を糧に快勝できたと指揮官は振り返る。「前回の試合の反省が生かされたことで、オフェンスの終わり方が良く、ディフェンスに入りやすかったところもあります」
Window2は後半に入って中国のプレッシャーが強まった時、圧力に飲まれてミスを重ねたことで失速した。しかし、「1番、2番ポジションのところで、ハンドラーをしっかり置く。あとは5人でどういう風にアタックするのか意思統一がしっかりできたと思います」と振り返ったように、今回はポイントガードだけでなく、西田優大や比江島慎などハンドリングに優れたウイングを積極的に起用することで、プレッシャーリリースに成功した。
前任のトム・ホーバス体制は、河村勇輝という1対1で打開できる傑出した個のアドバンテージをフル活用し、ポイントガードにゲームメークを依存するスタイルで多くの成功を得た。しかし、唯一無二の河村がNBA挑戦によって不在の中でも同じ戦いを継続したことで、オフェンスの停滞が顕著だったのが、ベスト8決定戦で散った昨年の『FIBAアジアカップ2025』だった。
この苦い経験を生かし、ホーバス体制の最後の試合となったWindow1からより多くの選手がボールに絡むオフェンスを展開するようになった。この全員で攻めるスタイルをより加速させていったのが今の代表だ。この変化について、久しぶりの代表復帰となった比江島は「前まではポイントガード中心でしたけど、今は2番、3番のハンドラーの役割がすごく大きくなっています。そこはこれまでとちょっと違う部分と思っています」と語る。
各選手の尖った個性を最大限に生かす。そして「全員が危険な選手にも汗かき役にもなれるのが、相手にしたら一番怖い」と琉球ゴールデンキングスの指揮官として語っていたことを、日本代表でも実践することで、より厚みの増したオフェンスを展開している。
最後にこれまでにない多くのスタッフが代表に関わる中で、歴史的な勝利を挙げたことは選手だけでなく、コーチ陣も含めて日本バスケットボール全体の底上げにつながる。「代表で戦う経験は本当に大切だと思います。この経験を次の世代に繋いでいきたいです」と指揮官も手応えを語る。
この1勝で生まれた上昇気流をさらに大きくするためにも、6日のアウェー韓国戦は勝ち切りたいところだ。韓国はここで負けると1次ラウンド敗退が決まる崖っぷちで、死にものぐるいで向かってくる。この状況でも勝ち切ることで、日本代表はもう1つ上のレベルに到達する成功体験を得ることができる。