中国ダービーは島根が連日僅差の勝利を飾る

B1第33節、島根スサノオマジックはアウェーで広島ドラゴンフライズと対戦。第1戦はダブルオーバータイムの末、104-102で勝利。第2戦も最後まで勝負の行方がわからない接戦となり、73-72で連勝を飾った。中国ダービーは両日ともに大熱戦となった。

島根はシーズン終盤に来て、ケガ人が続出している。インサイドの要であるジェームズ・マイケル・マカドゥは復帰の見込みが立たず帰国。さらに、第1戦で負傷した帰化選手のダマ ムッサとエースの岡田侑大も第2戦を欠場することに。手薄になったインサイドの劣勢は大きな不安材料だった。

その中でステップアップを見せたのが、ルーキーの介川アンソニー翔だ。学生時代はインサイドでプレーしていたが、島根ではウィングのローテーションで起用されてきた。今節は多くの時間帯で外国籍選手とマッチアップし、奮闘を見せてチームを支えた。

第2戦を終えた介川は、次のように試合を振り返る。「自分が外国籍選手を守る必要がありました。相手のほうがサイズがあるので、しっかりと身体を張って、フィジカルもメンタルも負けないようにやりました。速さは自分のほうが分があるのでそれを生かして上手く守ることや、チームの守り方の方針を遂行することを考えながら、頭を使ってプレーしました。オフェンスでは、速い展開で攻めて、アタックできる場面はしっかりと自分から仕掛ける意識でした」

スタッツに残らない献身的なプレーでチームに貢献したが、介川自身は100%納得したパフォーマンスではなかったと続ける。「もっとやれることはありますし、自分はそれができる選手だと思っています。ディフェンスの役割は果たせましたが、オフェンスはもっといけた場面もありました。レイアップに行かずパスしてしまいましたし、3ポイントはアテンプトを増やして決めないといけないですね」

「集中していると楽しくなっている自分がいる」

以前から注目度が高い中国ダービーの中で、今シーズンの名物となったのが介川とクリストファー・スミスのマッチアップだ。千葉ジェッツに所属していた2022-23シーズンのアワードでベスト5入りし、今シーズンも現在得点ランキング6位と実績十分なスミス相手に、介川は一歩も引かない姿勢で対峙した。

「スミス選手は今まで自分がマッチアップした中でもハイレベルな選手です。守ることが難しい場面もたくさんありますが、それがすごく楽しくて良い経験になっています。激しく当たってくる相手に対して負けない意思を見せること、そしてコーチの信頼に応えるためにも、自分を信じて思いっきりプレーするだけでした」

「楽しい」という言葉に偽りはないだろう。介川はスミスとマッチアップしている時に笑顔を見せていた。「守れるか不安に思うこともありますが、集中していると楽しくなっている自分がいますね(笑)。なぜか分かりませんけど」

第1戦にも印象的なプレーがあった。第2クォーター残り3分、介川はローポストでスミスを背負い、ゴールにアタックした。ファウルをもらいながら放ったシュートは惜しくも成功しなかったが、フリースローは獲得した。身長は介川のほうが4cm高いとはいえ、スミス相手に積極的に1on1を仕掛けられる日本人選手は多くない。

「あれは自分がやらないといけないプレーです。ああいう意識がないと今後は使ってもらえないので、相手が誰だろうが身体を張ってシュートまで行くと決めています」

強い気持ちを持ってプレーするからこそ、新たな課題が見つかった。これを成長に繋げたいと介川は意気込む。「スミス選手はすごく足が速いわけではないですが、緩急を使ったドライブをする瞬間にクイックです。あれほどクイックな選手とは今までマッチアップしたことがないので、もっとトレーニングして、相手の1歩目に対応できるようにしていきたいです」

「レベルアップしている姿を見せたい」

介川は専修大2年時の一昨年12月に島根とプロ契約(特別指定選手)を結び、今シーズンからプロキャリアをスタートさせている。しかし、オフの間に負傷して調整が遅れ、シーズン開始から2ヵ月ほどは出場機会を勝ち取れていなかった。介川は「最初はレベルの高さを感じていました」と振り返り、悩みも多かったと明かすが、「その中でもハードワークし続けて、やっとチャンスが来ています」と話すとおり、出場時間こそ安定していないものの、シーズン中盤からはローテーションの一角として確実に存在感を示している。

介川は起用が限られたシーズン序盤と現在の違いをこう話す。「一番違うのがディフェンスで、求められていたハードさを出せるようになってきました。特にルーキーはディフェンスで勢いをつけて、そこからオフェンスで『こういうこともできるんだよ』というのを見せるのが大事だと思います」

ケガ人が続出する状況だが、介川は前向きに自身の役割を遂行しようとしている。「本来のポジションではない役割もありますが、それをマイナスにとらえないようにしています」と言う通り、その表情は終始明るい。充実している証拠であり、自身の未来に対する期待である。

「しっかりと3番や4番でプレーできる選手だったら、コーチも使いやすいと思いますし、4番として日本代表に呼ばれるかもしれません。今を良い経験にして、来シーズン以降にも生かしていきたいです」

レギュラーシーズンは残り5試合。島根は26勝29敗の西地区8位でチャンピオンシップ進出の道は断たれている。それでも介川は前を向く。

「1試合1試合を大事に戦い、ハードなディフェンスからチームを盛り上げていきたいです。自分が得意なトランジションでのスコアや、ワイドオープンのシュートをしっかり決めて、今シーズンを良い形で締めくくってレベルアップしている姿を見せたいです」

まだ22歳。身体を張りチャレンジしていくことで、確実に経験値を積み上げている。恵まれたサイズとフィジカルに加えて、プレーの幅は広がりつつある。チームと自身の未来を前進させる介川の挑戦から目が離せない。