「そんな簡単に優勝できないとあらためて感じました」
女子バスケットボール日本代表は、『FIBA女子アジアカップ2025』決勝でオーストラリア代表と対戦。グループフェイズで敗れた相手への雪辱を期したが、最後まで質の高いチームオフェンスを遂行したオーストラリアに79-88で敗れた。
日本代表は試合の出だしからサイズとフィジカルの優位を生かしたオーストラリアのインサイドアタックに苦戦。さらにオフェンスリバウンドを続けて取られるなど、相手の分厚い攻撃を止め切れない。一方、オフェンスは武器の3ポイントシュートを徹底的に封じられ、前半の試投数は9本のみ。ドライブで打開を図るが、良いシュートチャンスに繋げられずターンオーバーを重ねる悪循環に。前半だけで19得点を挙げた田中こころの奮闘で食い下がるが、11点のビハインドでハーフタイムを迎える。
後半に入っても劣勢を打開できず、第4クォーター最初のポゼッションで3ポイントシュートを決められ59-70と追い込まれる。しかし、ここから「なかなか追い上げられなかったので、もう決めるしかない。少しでもチャンスがあれば打とうと思っていました」と語った宮澤夕貴の連続3ポイントシュートでついに日本に流れが来る。
さらに髙田真希の連続得点もあり、日本は約1分半の間に11-0のランで残り7分半に70-70と追い付いた。このまま一気に押し切りたかったが、オーストラリアはこの踏ん張りところでタフショットを沈めて盛り返す。そして、最後まで日本は巧みなパス回しから繰り出す相手のペイントアタックを止められずに敗れた。
「負けて『これじゃダメだ』と全員が再認識できた」
第4クォーターに見せ場を作った宮澤は18得点9リバウンドを記録。点差よりも接戦の内容だったが、「これが今のチームの現状で、そんな簡単に優勝できないとあらためて感じました。ディフェンスで我慢できないですし、チャンスをつかみ取れない、どこがチャンスなのかを全員が把握して、共通認識を持つことができていなかったです」と、自分たちに厳しい。
そう課題を語る一方で、「でもポテンシャルは感じますし、若い子たちの成長をこの大会で感じました。客観的に、成長している姿を見られたのは楽しかったです」と収穫も強調する。
今大会の日本代表は、格下のレバノン、フィリピンに辛勝と最悪のスタートを切ったが、準決勝の中国戦では攻守に最高のパフォーマンスを見せ、優勝候補の大本命を撃破した。振れ幅の大きさはチームの可能性であり弱みでもあり、宮澤も「フィリピン戦を終えた後、これがチームの現状、これが私たちの実力だととらえていて、中国戦であれだけのプレーができるとは思いませんでした。その後に良くなっていって、やっと日本らしさが出ましたけど、最初の2試合は何をしているんだという感じでした」と語る。
この課題を改善するためには一人ひとりの意識改革が欠かせない。だからこそ宮澤は、「ある意味、負けて良かったではないですけど、今までの練習の感じでこのまま優勝してしまったらどこかで満足してしまう感じもしました。チームが若い分、負けて『これじゃダメだ』と全員が再認識できたと思います」と、敗戦から得られたものに期待する。
宮澤個人でいえば、決勝だけでなく中国戦も18得点9リバウンド5アシストのハイパフォーマンスで、中心選手として日本の7大会連続決勝進出をもたらした。ここ数年は代表で思うようなプレーができていなかったが、コーリー・ゲインズ体制になり、「コーリーのバスケットは割と自由にできるのでプレーしやすさはあります。自分の強みを出しやすい、やりやすかったです」と本領を発揮している。
「日本のために頑張りたいという気持ちだけです」
大会通算の3ポイントシュートは26本中13本を決めて成功率50%と決定力が光ったが、自身が得た収穫に「手応えとして数字に表れない部分でのヘルプを頑張って良かった」と、的確なカバーで守備の綻びを埋めたプレーを挙げる。「あとで試合を見返した時、チームを救っているように見えたので、継続していかないといけないです。そういう数字に出ない部分の動きを全員ができるようになったら日本はもっと強くなると思います」
「私ももともとこういうプレーができたのではなく、経験を重ねることでできるようになりました。あとは自分がどこまでの選手になりたいのか。点数だけ取れば満足なのか、そうでないのか。何を自身に求めるのかが関係すると思います」
宮澤が「若いチーム」と強調するように、ゲインズ体制の日本代表は19歳の田中こころを筆頭に若手を抜擢し、新たなサイクルに入っている。その中でも32歳となった宮澤は健在ぶりを示した。代表に懸ける強い気持ちは今までと変わらない。「日本のために頑張りたいという気持ちだけです。チームに必要不可欠な存在であり続けられるようにこれからも頑張っていきたいです」
今大会、若手が貴重な国際経験を積めたのは大きな収穫だが、富士通をWリーグ連覇に導くなど日本女子バスケ界を牽引する宮澤の力を代表で再び生かせたことも大きな価値がある。これからのワールドカップ予選、ワールドカップ本大会でも代表の中心というあるべき場所に戻った宮澤の活躍が楽しみだ。