モーゼス・ムーディー

指揮官カー「彼のバスケへの姿勢はずっと好きだった」

ウォリアーズはステフィン・カリーがほとんどプレーしなかったにもかかわらず、プレシーズンの6試合を全勝で終えた。クレイ・トンプソンの退団で王朝の代名詞だった『スプラッシュ・ブラザーズ』は解散となったが、その代わりに選手層の厚みを手に入れた。

選手層の厚みは主力選手のアクシデントに備え、チームの好不調の波をなくす効果をもたらす。その一方でプレータイムは48分×5しかなく、選手のモチベーションやコンディションの管理は難しくなる。カイル・アンダーソンやゲイリー・ペイトン二世といった実績ある選手と、ジョナサン・クミンガやモーゼス・ムーディーといった若手をどうバランス良く組み合わせていくか、指揮官スティーブ・カーはうれしい悲鳴を上げたいところだろう。

そんな中、現地10月20日にウォリアーズはムーディーと3年3900万ドル(約58億円)の契約延長で合意した。ムーディーは2021年の1巡目14位指名を受けた22歳のウイング。3ポイントシュート成功率36.2%とそれなりの結果は出していたが、クレイ・トンプソンがいてブランディン・ポジェムスキーがブレイクする状況で自分の役割を見いだすのは簡単ではない。3年目の昨シーズンに大きな成長が見られなかったことで、トレードの噂も絶えなかった。

それでも今夏、チームから聞こえてきたのは練習に取り組む彼の真摯な姿勢であり、それによる急速な成熟だ。身体改造とともに3ポイントシュートのリリースを速める修正に取り組んだムーディーは、プレシーズンゲームではオフェンスを牽引する働きを見せた。

指揮官カーは「これまでも彼のバスケへの姿勢はずっと好きだったが、最近は特に良い。自信を持ってプレーできている」とムーディーの出来を称えていた。「彼は我々にとって大きな役割を果たすだろう。ただ、他の選手にも同じことが言える。最近コーチ陣が集まって話すのは『どうやって全員をプレーさせるか』ばかり。全員がプレーするに値すると、我々の判断は難しくなる。引き続き全力でプレーして、我々を苦しめてほしいよ(笑)」

この選手層の厚みは、選手起用だけでなくバスケのスタイルにも多様性をもたらす。カリーの欠場によって得たチャンスを生かしてディアンソニー・メルトンは評価を上げたし、ムーディーとペイトン二世はアンドリュー・ウィギンズを巻き込み、セカンドユニットではなく先発の座を争う可能性がある。パワーフォワードのポジションではクミンガとアンダーソンが競争しているが、センターのトレイス・ジャクソン・デイビスが評価を上げればドレイモンド・グリーンとフロントコートで組み、彼らのプレータイムを食い始めるだろう。

ただ、その中でもムーディーの好調ぶりは頭一つ抜けている感がある。ウォリアーズはサラリーキャップの管理に慎重で、特にルーキー契約の延長では過去に大きな失敗をしているだけに消極的だが、そのフロントに決断させるだけの信頼を彼は勝ち取った。NBAでは4年目で『将来有望な若手』のままではいられない。2024-25シーズンはムーディーにとって飛躍の年になるべきだ。