田中大貴

勝利を決定づける一撃も「正直、100%のコンディションからは程遠い」

3月20日、ファイティングイーグルス名古屋戦の第4クォーター5分37秒、サンロッカーズ渋谷の田中大貴が見事な3ポイントシュートを決めた。1月31日の富山グラウジーズ戦以来、約2カ月ぶりの復帰を祝う見事なショットが決まり、点差を一時13点まで広げた。それは、この日9,623人が集った有明コロシアムが、ひと際沸いた瞬間だった。

中地区で1ゲーム差に迫られていたFE名古屋との試合に72-65で勝利し、チームメートと笑顔でおどける姿も見せ喜びを表現していた田中だが、記者会見での表情はそこまで明るくはなかった。それは復帰戦であり、本調子には至っていないから。何より本人がそのことを自覚しており、「正直、100%のコンディションからは程遠い。まだ不安な部分もあった」と振り返っていた。19分32秒のプレータイムの中で、リングを狙ったのは先述の3ポイントを含めて2回のみ。アシストも1回を記録しただけだ。

それでも、彼がコートに戻ってきた意味は大きい。「大貴はチームを一つにしてくれる存在。彼なくして、戦う集団は作れなかったと思う。ケガを乗り越えてくれたことが何より重要なことだった。オフェンスもディフェンスも、彼がいることで救われているし、そこに対して疑う余地もない」

2022年まで指揮を執っていたアルバルク東京で田中とともに多くのタイトルを獲得してきたルカ・パヴィチェヴィッチヘッドコーチは、諸手を挙げて復帰を歓迎していた。それとともに、「今まで通りプレーすることが大切だが、今はあまりプレッシャーを掛けたくない」とも。少しずつコンディションを戻せばいいという親心もヘッドコーチのコメントからはにじみ出ていた。

逆転でのチャンピオンシップ進出に向けて、田中はチーム内での自身の役回りも自覚する。彼が不在の中、奮闘してきた津屋一球について「力をつけてきて頼もしい」と話しつつ、「ここからは全員でまとまってやっていきたい」と年長者らしいコメントも残した。「これまでたくさんの経験をしてきたので……。でも、口でどうこう言うよりも、早くコンディションを上げたいし、そこに集中したいです。チームに対して一番影響を与えられるのはコートの上。今できる中でのベストを尽くしてやっていきたい」

チームも3連敗の後の2連勝で、状態は上向いている。ここでの田中の復帰を追い風にして、4ゲーム差となっている中地区2位のシーホース三河に追い付きたい。一戦必勝。SR渋谷の負けられない試合は続く。

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