ロケッツの成長に合わせて技巧派センターの才能が開花
NBAキャリア3年目のアルペラン・シェングンは『飛躍のシーズン』を迎えている。今オフのロケッツはフレッド・バンブリートにディロン・ブルックス、ジェフ・グリーンといった経験ある選手を補強してドアマットチームから脱却したが、今はまだ中堅チームでしかない。上位チームと渡り合い、プレーオフに進出して勝ち上がるためには、若手の成長が必須となる。多くの若手がいる中で、今最も勢いがあるのがトルコ出身の211cmの技巧派センター、シェングンだ。
優れたスキルと広いプレービジョンを持ち、しなやかな動きから得点もアシストもできる。パワーと運動能力は少々物足りないが、それはむしろ今の流行りのスタイル。ナゲッツのニコラ・ヨキッチに代表される、ペイントエリアから効率の良いプレーを生み出してチームを操るビッグマンだ。
シェングンは過去2シーズンも主力として活躍してきたが、今シーズンのパフォーマンスは一味違う。それは彼自身の成長だけでなく、攻守のシステムが明確になり、経験ある選手が入った成果だ。これまで彼がコントロールしようにも、操られる選手のレベルが低く、連携も上手くいかなかった。勝てないチームで自分のスタッツを意識するチームメートと一緒では、シェングンのようなプレーヤーの持ち味は出ない。それが今シーズンは変わった。一番の違いはバンブリートで、2人はコンビを組んですぐに絶妙な精度でピック&ロールを繰り出すようになった。
「フレッドはすごく優秀なポイントガードだ。得点を決めるだけじゃなく、試合の状況に応じて何が正しいプレーなのかをよく分かっている。特に僕はディフェンスで彼の指示に助けられている。一緒にワークアウトしている時も、多くのことを教えてもらっているよ」とシェングンは言う。
もう一人、彼が評価する新加入選手は彼が「ジェフおじさん」と呼ぶグリーンだ。同じビッグマンでNBAで17年目のキャリアを誇るグリーンは、すぐに若い彼のメンターになった。納得のいかないジャッジに不満を溜める時、グリーンの声が聞こえると冷静になれるそうだ。「ジェフとフレッドには優勝経験がある。優勝したチームが何をしてきたのか、その貴重な経験を教えてもらえる。僕はずっと彼らのようなベテランを求めていた。今は経験豊富なベテランが僕らに自分の知識を惜し気もなく教えようとしているし、僕らは学ぶことを喜んでいる。それがチームの良い雰囲気に繋がっている」
まだ12試合を消化しただけだが、シェングンは得点を14.8から20.9へ、アシストを3.9から5.7へと伸ばしている。直近ではレイカーズ戦でレブロン・ジェームズとクラッチタイムに得点を取り合って23得点10リバウンド5アシストを、連戦となったウォリアーズ戦では30得点13リバウンドと絶好調だ。
ニコラ・ヨキッチは昨シーズンの対戦の際に、同じヨーロッパ出身で似たプレースタイルのシェングンについて「ロケッツは3ポイントシュートばかりで攻めが停滞するから、もっと彼を使うべきだ」と語っている。そして現地11月12日、今シーズン初の対戦の後にヨキッチは笑顔でこう言った。「僕の言った通りに変化している。彼は自分のためじゃなくチームのためにプレーしている。彼はパスが好きだし、彼がボールを持てばチーム全体が動く」
シェングンはヨキッチを『お手本』としてリスペクトし、「今の彼はモンスターだけど、いずれそのレベルに到達したい」と語る。その彼は今オフ、俊敏さと運動量を増やすための身体強化とともに、自分の新たな武器として一本足で放つフェイダウェイの習得に時間を費やした。すでに実戦で何本か決めているシュートは、ヨキッチの『ソンボル・ステップ』に見える。同じリーグに最高のお手本がいて、自分を導いてくれる経験豊富な仲間も得た今、シェングンは大きく飛躍しようとしている。ヨキッチの成長とともにナゲッツがたどった道を、ロケッツも追うのかもしれない。