ダニー・グリーン

グリーンのプロフェッショナル精神が『ハーデン問題』に効く?

セブンティシクサーズが36歳のシューター、ダニー・グリーンと契約を結んだ。契約内容は明らかにされていないが、非保証の1年契約と見られている。

2009年のNBAドラフトで指名されてから14年のキャリアを持ち、スパーズとラプターズ、レイカーズで3度の優勝経験を持つベテランは、1年ぶりのシクサーズ復帰となる。

2022年のプレーオフ、ヒートとのカンファレンスセミファイナルにシクサーズは敗れた。この最後の試合でグリーンは倒れたジョエル・エンビードに巻き込まれる形で前十字靭帯断裂の大ケガを負っている。オフにシクサーズはグリーンをトレードで放出したが、ダリル・モーリー球団社長は別れを惜しむとともに「経験豊富なリーダーで、非の打ちどころのないプロフェッショナル。一番のベテランなのに毎日プレーを楽しみ、バスケを愛している。こんな選手はほとんどいない」とグリーンへの称賛の言葉を惜しまなかった。

昨シーズン、ケガから復帰したグリーンはグリズリーズとキャバリアーズで11試合に出場したが、大きなインパクトは残していない。大ケガを経験し、36歳になった。無事にローテーションに食い込んだとしても以前のような役割をこなせるかどうかは分からない。

それでもモーリーは彼の人間性に惚れ込んでいるし、新たなヘッドコーチのニック・ナースはラプターズ時代にともにNBA優勝を勝ち取った仲。抜け目ないディフェンダーとして、シャープシューターとして活躍してくれればベストだが、それとは別にチームを束ねるベテランとしての期待も大きいはずだ。

さらに言えば、暗礁に乗り上げた『ジェームズ・ハーデン問題』に何らかの影響を及ぼすこともフロントは期待しているのかもしれない。ハーデンは契約延長を巡って長い付き合いのモーリーと衝突し、トレードを要求している。しかしシクサーズは十分な見返りを得られないトレードには乗らず、ハーデンが新シーズンも残ってプレーすることを希望している。

シクサーズの隠れた問題は、ロッカールームに求心力となる存在がいないこと。これはミスをしたベン・シモンズをチームもフロントも守らずに精神的に追い込んでしまったような過去からも明らか。成功を収めるチームは一つにまとまっているものだが、シクサーズはここが弱点となっている。

エンビードが絶対的な存在である以上、それ以上の強い個性を加えることはできない状況で、プロフェッショナルのお手本となる姿勢を見せ、優勝3度という揺るぎない実績を持つグリーンであれば、チームの重石になれる。

グリーンがいるだけで『ハーデン問題』が解決するとは思えないが、彼がロッカールームに与えるプラスの影響は決して小さくはない。藁にもすがる思いのシクサーズにとっては、『彼しかいない!』と思える存在に違いない。