泥臭いプレーを疎かにせず、攻守に誰よりもハードワーク
オミクロン株の急拡大とともに欠場者が増えた中では、選手が揃わないことでチーム作りが進まず、特定の選手に負荷がかかるケースも出てきます。チーム戦術の中心となるスーパースターには特にその傾向が強く出ていますが、ここまでリーグ最長のプレータイムを記録しているのがラプターズのフレッド・ヴァンブリードです。ドラフト外から這い上がった苦労人の27歳は、オールスターに選ばれるに相応しい活躍でチームを牽引しています。
21.7得点、7.0アシストはともにチームハイで、オフェンスの中心でありながら驚くような身体能力を持っているわけでもなければ、観客を魅了する鮮やかなスキルを見せるわけでもないため、バンブリートを『スーパースター』と呼ぶのは少々躊躇ってしまいます。しかし、強気なプレーチョイスは目を見張るものがあり、重要な場面でも臆することなく自分で打ち切れるメンタリティの強さは、優勝経験を持つポイントガードならではです。
ゲームメーク能力の高さも目立ちますが、『華麗な連携を生み出す』よりは『適切なプレーをチョイスする』のがバンブリートのゲームメークです。人とボールが動くラプターズの戦術はチーム全体が連動することを求める一方で、時に個人の1on1を多用する一面もあります。バンブリートに求められるのは、コート上で勝てるマッチアップをいち早く見つけてパスをさばき、有効活用していくことです。ベンチにポイントガードの控えはいても、この状況判断能力に大きな差があるからこそ、バンブリートは代えの利かない選手としてプレータイムが長くなっているのです。
また、ラプターズの真骨頂であるディフェンスでは、さらに多彩な役割が与えられ、相手のシューターをチェイスする時もあれば、相手センターへのダブルチーム担当になることもあります。185cmと小さい身体ながら、抜群の読みの良さでパスカットが上手く、リバウンドやルーズボールなど球際でも強さを発揮していきます。ドラフト外だからこそ泥臭いプレーを疎かにせず、攻守に誰よりもハードワークしています。
バンブリートのプレータイムが長くなっているのは、長年チームの顔であり、リーダーであったカイル・ラウリーの移籍が大きく影響しており、いくらパスカル・シアカムやOG・アヌノビーが活躍していても、リーダシップを取れるポイントガードがいなければ、ラプターズの難解な戦術は成立しません。新たな顔としてチームの浮沈を握るのがバンブリートなのです。
派手なハイライトプレーを連発する選手ではないものの、チームの頭脳であり、心臓であり、そしてエースでもあるバンブリートが、オールスターという舞台でスーパースターたちを引っ張る姿を見てみたいものです。