取材・写真=古後登志夫 構成=鈴木健一郎

B3スタートから2年連続昇格でB1で戦う権利を勝ち取ったライジングゼファーフクオカ。チームの『顔』である山下泰弘と小林大祐は、長いシーズンを終えて疲弊した身体をケアしつつ、地元メディアのひっきりなしの取材に対応しながら、早くも来シーズンの戦いに思いを馳せる。連続昇格を果たしたチームは壁にぶつかることになるだろう。山下も小林も30代、これまでのキャリアで様々な経験を積み、B1昇格に浮かれていられないのは重々承知している。とはいえ、シーズンを終えたばかりで少しリラックスした2人に『本音』を語ってもらった。

小林「B3やB2とは比べ物にならない厳しい戦いになる」

──昇格と優勝おめでとうございます。一通りお祝いやセレモニーが終わった時期に『次』を語っていただこうと思いますが、来たるべきB1での新シーズンをどうイメージしていますか?

山下 ようやく目標としていた舞台に立てるので、ドキドキとワクワクです。

小林 ようやくスタートラインという気持ちで、身が引き締まる思いです。これからB3やB2とは比べ物にならない厳しい戦いになると思うので。やっぱりB1の強豪とはチームの歴史が違います。強いチームはヘッドコーチや主力が変わらず、チームのスタイルというものがちゃんとあって、それに合った補強として新しい選手や外国籍選手を入れていくので、土台の上に積み上がっているんですよね。そういった意味で福岡は監督も代わってきたし、チームのスタイルという意味では歴史が浅いので、歴史の深いチームにどう打ち勝っていくかです。

山下 B1の上位チームを見ていると、コーチもメンバーも代わらず、プレー面の細かいところがどんどん完成されていっている。それぞれの特徴や互いの良いプレー、悪いプレーが分かっている。そこはとても脅威になるところですね。

──B3とB2ではあっても、福岡も2人が加わったこの2シーズンで土台は作ったと思います。これからB1で戦うために、メンバーは継続すべきか入れ替えるべきか、2人の個人的な意見を聞きたいです。

小林 本当に半々ですね。スタイルがちょっとずつ見えてきた時期なので、このままのメンバーで行ってもいいのかな、という気持ちが少しはあります。ただ戦力的に考えて、僕も含めて力の差はあると思うので、そういった意味では外国籍を含めて選手補強は必要です。

山下 このメンバーでB1まで来て、基本的にはこのまま行きたい気持ちはもちろんあります。ただプロとして考えた時に、それだけで勝ち続けるのは難しいので、多少なりとも補強は必要だと思います。

山下「がむしゃらにやる気持ちだけでは勝てない」

──去年の昇格組だと、西宮ストークスは継続、島根スサノオマジックはチーム刷新を選択しましたが、どちらも結果は出ずに1年で降格です。B1とB2のレベル差はそれだけ大きいという現実があると思いますが、福岡がB1で生き残るためには何が必要になるでしょうか?

山下 正直に言えば、福岡としても十分にそうなる可能性はありますよ。福岡として選手はもちろんですがフロントも一緒に力をつけていかないと、魅力あるチームにはなれません。プレイヤーもレベルアップしつつ、会社も良くなっていかないと、補強したいと思ったところで良い選手が来てくれないわけですから。

小林 良い選手だけが揃ったチームが勝てるわけではないと僕は思います。日本代表レベルの選手が揃っていても勝てないチームはあるし。そういった意味では良い選手を揃えることは第1条件だけど、良い選手と良い監督をどう選ぶかがトップチームを作る土台になると思います。

──今すぐB1を戦っても勝てる自信はありますか?

山下 順位としては下のほうになるでしょうね。一人ひとりのサイズ、フィジカルの部分も足りないです。自分たちのどの強みを生かすか、相手の弱点のどこを攻めるかをチームで徹底する細かいバスケットIQの部分もそうです。がむしゃらにやる気持ちだけでは勝てないですね。

小林 今のままだとチャンピオンシップ進出を目標に、といったところですね。やっぱり共通意識の差が命運を分けるところだと思います。

小林「九州の負けん気の強さをどうバスケットで出すか」

──実際のところ、B1を戦うための補強が行われると思います。山下選手と小林選手が福岡出身で、地元の選手を獲得してチームの軸に据える成功例になりましたが、この方針を続けることをどう思いますか? 福岡出身、九州出身のトップ選手はたくさんいて『福岡オールスター』のチームに期待する声もあります。

山下 『オール福岡』でどこまで行けるか一度試したいという気持ちはありますよ。でも、僕たちはプロフェッショナルだし、福岡愛を強調しすぎると県外の選手からの抵抗が出てきます。そのマイナスも考える必要がありますよね。

小林 福岡出身で良い選手が多いのは事実なので、そこでオールスターを作るというアイデアは面白いと思います。でも、さっき言ったように大事なのはバランスです。良い選手を集めるだけでは寄せ集めになりかねない。だから福岡に限らないのも大事です。

──現状、ライバルに比べて福岡の「ここは勝っている」という部分はどこですか?

山下 福岡の食べ物は日本のどこにも負けないんですけど(笑)。実際は個人技ですかね。上回るとは言わないけど、引けを取らないとは思っています。

小林 潜在能力はすごくあると思います。あとは九州の負けん気の強さをどうバスケットで出していくか。もつ鍋は確かに勝ってますね(笑)。

──チームだけでなく個々の準備も大事かと思います。2人は何か特別な『B1対策』の予定はありますか?

小林 来シーズンに向けてのテーマはもう決めています。ディフェンスをかわす技術、状況判断や的確なパスの力はつきました。ディフェンスもある程度は自信があるので、今年のテーマは1対1です。外国籍選手が仕掛けるような1対1の打開力を磨きます。

山下 僕はフィジカルですね。正直に言えば、B3やB2ではフィジカルがないほうが得をすると感じていました。フィジカルが強すぎるとファウルに見えるので。でもB1になるとコンタクトが強いし、外国籍選手のピックもすごい衝撃なので、まずは身体を作り直さなきゃいけないと思っています。1対1は僕も意識するところですが、そこはB1の選手が相手となるとそう簡単ではないので、状況判断をクリアにしていきたいです。

ライジングゼファーフクオカの山下泰弘&小林大祐が見据えるB1での戦い
(後編)「福岡が誇れるチームになりたい」