取材・文=鈴木健一郎 写真=古後登志夫

高校バスケットボール界の『女王』である桜花学園は今、新チームへの切り替えの真っ最中。これまで馬瓜ステファニーが務めたキャプテンの後任は山本麻衣となった。常勝チームで重責を担う、タイプがまるで異なる『新旧キャプテン』による対談は、気の置けない先輩と後輩による笑いの絶えないものとなった。

山本「今は声でチームを引っ張ろうと思っています」

──今回は桜花学園の新旧キャプテンに、『キャプテンとは何か』を語っていただきます。まずは山本選手、馬瓜選手がどんな先輩なのかを教えてください。

山本 コートの外ではすごく明るいムードメーカー的存在で、みんなを笑わせてくれます。いるだけでその場が楽しくなります。

馬瓜 ありがとうございます!

山本 コートの中では、チームが苦しい時に点を取ってくれたり、大事なところでしっかりシュートを決めてくれる、いなくてはならないプレーヤーですね。

馬瓜 うーん、なんかこっちは無理やり言ってない?(笑)

山本 そんなことないですよ。本当に思ってます!

──それでは馬瓜選手は、後輩としての山本選手をどう見ていますか?

馬瓜 コートの外ではフワフワしている『女の子』なんですけど、コートに入ると男勝りになるんです。ドライブとかゴリゴリ行くので、そのギャップはすごいですね。ガードとして頼りになる選手です。

──馬瓜選手はどんなキャプテンでしたか?

山本 基本的にはプレーで引っ張るタイプですが、チームが悪い雰囲気になった時に喝を入れてくれたりとかもありました。自分はまだプレーとかシュートの確率が良くないので、今は声でチームを引っ張ろうと思っています。

──山本選手が新キャプテンに決まった時はどんな感想でしたか?

馬瓜 自分の時と違って、みんな「そうだろうな」という反応でした。自分の時は「えー!?」みたいな感じだったのに(笑)。山本は今までも練習中にチームがダメだとすごく声を出していました。私よりもずっと喝を入れるほうだし、しっかりチームをまとめていけると思います。

馬瓜「手を挙げたら『お前なんか無理だろ』と(笑)」

──馬瓜選手がキャプテンに決まった1年前のエピソードが相当面白いと聞きましたが、教えてもらえますか?

馬瓜 オールジャパン1回戦の前日だったっけな。移動中に保護者の方から「来年のキャプテンはどうしますか?」という話題が出て、そこで先生が「山本だな」って言うんです。みんな「何!?」みたいな(笑)。ウインターカップで負けたのは自分の責任が大きかったので、責任を負うという意味で「自分がやる」という気持ちが私にはありました。その後のミーティングで先生が「キャプテンは山本に……」みたいなことを言い始めたところで、「私がやります」と手を挙げました。そしたら即座に「お前なんか無理だろ」って(笑)。それで先生が「多数決を取れ」って言うんですよ。

山本 私も「ちょっとそれは3年生の方にやってもらいたいです」と思っていました。自分にできるわけがないので。もう本当に無理でした。

──監督としては「3年生が立候補しろ」という気持ちもあったんでしょうか。

馬瓜 多分あったと思います。でも、はっきりとは言ってくれなくて「感じろよ」という話なんですよ。それで多数決で自分が何とかキャプテンになりました。その後も「お前なんかキャプテンやめちまえ」みたいな時期は何度もあったんですけど。先生の部屋で怒られて、そこで「やらせてください」みたいな。

──キャプテンをやったことで自分が変わったと感じますか?

馬瓜 うーん、それまでは適当な感じでやっていた部分がありました。でもキャプテンはチーム全体の責任を負っているし、周りからの期待を全部背負って、自分らしいプレーもできないといけないから、自分を持ちながらもきちんと責任感を持ってできるようになったと思います。

──チームをまとめるという部分だけでなく、コート上でのプレーにも影響はありました?

馬瓜 はい。それは本当にありましたね。2年生の時は決勝で6点しか取れないとか本当にダメな選手だったので。キャプテンだからこそ自分で責任を持って、あれだけ攻めようって思ったのかもしれないです。

馬瓜「声に出さずともリーダーシップを発揮できる人が理想」

──山本選手は、キャプテンになったことでの馬瓜選手の変化をどう見ていましたか?

山本 それまでも声は出してくれていたんですけど、チーム全体を見て声を出してくれるようになったと思います。

馬瓜 もともとセンターは声を出さなきゃいけないポジションなので、ちゃんとできていたかどうかは分からないです(笑)。

──今回、山本選手がキャプテンになるのはいつ発表されたんですか?

山本 ウィンターカップ決勝が終わった後の祝賀会です。インターハイやウインターカップの前に監督が手紙をくれるんですけど、ウインターカップ決勝の前にもらった手紙にそう書いてあって、心の準備はしていました。やっぱり馬瓜さんみたいに、声でもプレーでも仲間を引っ張ることのできるキャプテンになりたいです。

馬瓜 やめたほうがいいです。自分みたいなキャプテンになったら、いつ井上先生に怒られるか分からないので(笑)。

山本 えー。しっかりしていますよ。

馬瓜 もっともっとしっかりしたキャプテンになってください(笑)。

──高校生だと自分のレベルアップに精一杯で、チーム全体に気を配るのは相当難しいんじゃないかと思います。

馬瓜 自分の場合は、あまりそういうのを意識していなかったんです。周囲が「前より声が出るようになったね」とか「ディフェンスで頑張れるようになったね」と言ってくれて。逆に良くない部分も指摘してもらえました。なので、自分一人でやったわけではないんです。みんなの助けがありました。自分はキャプテンという立場にこだわりはなくて、言葉に出さずともみんなを引っ張っていける人をカッコいいと思っています。声はもちろん出すんですけど、そうじゃなくてもリーダーシップを発揮できる人が理想ですね。

──キャプテンをやって良かったなと思いますか?

馬瓜 そうですね。キャプテンになっていなかったら逆にどうなってたんだろう(笑)。簡単にできるポジションではないし、桜花学園のキャプテンなんてなおさらなので、本当にありがたいです。

山本「経験の浅い選手を私が引っ張っていけるように」

──では山本選手、新キャプテンとしてどんなスタンスで臨みますか?

山本 今年のチームは経験の浅い選手が多いです。コートで気持ちを前に出せる選手も少ないので……と言うか今はまだいないので、私が引っ張っていけるように。コートでしっかり気持ちと声を出して、日常生活から声を掛けてあげたり話を聞いてあげたりするようにしています。

──バスケットボールではなく高校生活という意味でも卒業が近づいています。馬瓜選手にとって桜花学園で過ごした3年間はどんなものでしたか?

馬瓜 1年生の時は先輩が偉大すぎて、一応スタートで出ていましたが自分のことだけで精一杯で、チームの力になれていない部分がたくさんありました。2年生になって先生から「お前がやるんだ」と言われる立場になったのですが、どこか鼻を高くしていた部分があったから最後に負けたんだと思います。その負けを経験してキャプテンになって、この1年は自分なりにすごく謙虚に、勝っても調子に乗るんじゃなくて、しっかり地に足を付けてスタートできました。いろんな角度からチームを見ることができた3年間だと思います。

山本 もう卒業していなくなっちゃうと思うと寂しいです、本当に。

馬瓜 もう「バイバ~イ」って感じですね(笑)。

山本 嫌ですよ。近くにいるんですから、何かあったらすぐ来てください。

──でも2人は代表でまた一緒になるはずです。7月下旬にU-19ワールドカップがあります。

山本 イタリア、行きたいです!

馬瓜 ヨーロッパ、今までで一番いい遠征です(笑)。自分はこのチームでは中心選手ですけど、ジャパンにはそれぞれのチームの中心選手が集まってくるので、そこで自分らしさを出して頑張りたいです。

山本 アジアU-18選手権で中国に負けたのがすごく悔しかったので、今度は世界大会で中国より上の成績を残して、メダルを持って帰って来れるように頑張ります。