「多くの人は事故みたいなものだと思うだろう。だけど違うんだ」
ブルズは現地12月31日と1月1日、ペイサーズとウィザーズに連勝を収めた。特筆すべきはこの2試合いずれも、逆転ブザービーターでの勝利であること。決めたのはいずれもブルズのエース、デマー・デローザンだ。
ペイサーズ戦では距離のある3ポイントシュートを体勢不十分なまま放ってねじ込んだ。ウィザーズ戦の一発はさらにインパクトの大きなものだった。残り3.3秒でカイル・クーズマに逆転の3ポイントシュートを浴びてのラストプレー。時間がほとんどない状況でリスタートのパスを受けたデローザンは、マークするコーリー・キスパートを鋭いターンからのポンプフェイクで飛ばす。その間にブラッドリー・ビールが寄せて、ファウルをしないギリギリの距離でシュートを妨げようとしたが、デローザンは高い軌道の3ポイントシュートを決めた。
デローザンがシュートを放った左コーナーは、ブルズベンチの目の前。デローザンはブザーと同時にチームメートに揉みくちゃにされた。ペイサーズは良い守備をして難しいシュートを打たせた。ウィザーズもできる限りの守備はしていた。だが、デローザンに打たせたこと自体が間違いだった。
「ボールを受けた時点で2人が守っていること、若い選手が付いていたけどフェイクでかわせると思った。あとは足を揃えて、チャンスを決めきろうと思った。いつものことだから慌てはしない。大事なのは足を揃えることで、試合を通してずっと短い距離のシュートしか打っていなかったので、十分な距離を出すことを意識した。3.3秒であれ、時間が残っている限りは可能性があると信じている。可能性がある限りは勝利を狙いに行く。それが今夜の僕たちがしたことだ」と、デローザンはそのシーンを振り返る。
「昨日のシュートも、多くの人は事故みたいなものだと思うだろう。だけど違うんだ。このリーグで長年経験を積んでいれば、自分にどんなプレーの選択肢があり、何が有効なのかを感じ取ることができる。僕は素早くシュートを打たなければいけないと分かっていたし、同時に十分なスペースが必要なのも分かっていた」
2日連続で決勝ブザービーターを決めたのは、NBAの長い歴史の中でもデローザンが初めてだ。「それは知らなかった」とデローザンは言う。「ブザービーターは実際すごいものだし、アウェーでの試合ならなおさらだ。夢か現実か分からないけど、一生懸命にプレーして、チャンスが来たらモノにしたいと思っている。大事な瞬間に自分の力を発揮する、そのために常にできる限りの準備をしておくんだ。僕にできるのはそれだけだよ」
ウィザーズは残り5分で5点差以内という接った展開では14勝2敗、1ポゼッション差の試合は6連勝中と、試合終盤に突出した勝負強さを見せるが、それでもブルズはねじ伏せた。2日連続の劇的ブザービーターの勝利で大きな注目を集めるが、デローザンはいつも通り落ち着いた口調で「僕たちはただハングリーなのさ」と語り、こう続けた。
「今はロッカールームでみんなと一緒にいるだけで楽しいし、コーチングスタッフはやる気にさせてくれる。僕はただコートに出てプレーするだけ。このメンバーでバスケができること自体、夢が実現しているようなものだ。このメンバー、この組織がそんな文化を作っているんだ」
ファンの間で『第4クォーターの王』の呼び名が定着しつつあることについてデローザンは「誇らしいね」と、照れ笑いを浮かべる。「チームメートはいつも僕を頼りにしてくれる。だからこそ僕は第4クォーターにできるだけ冷静でいて、その姿を見てもらいたいと思っている。