主力不在、過密日程を乗り越えるパフォーマンスで宇都宮を破る
12月29日、アルバルク東京と宇都宮ブレックスの対戦は、今オフに衝撃の移籍を果たしたA東京のライアン・ロシターの、昨シーズンまで8年間在籍した古巣との初対戦としても注目を集めた。その試合でロシターは、自分のプレースタイルを熟知している相手に対し、19得点10リバウンド2アシストの活躍で69-66と競り勝つ立役者となった。
この試合、A東京は田中大貴、小島元基の両ガードが欠場したことで、司令塔のジョーダン・テイラーをいつも以上に使わざるを得ない状況となった。テイラーと帰化選手はセットでの起用となるため、必然的にロシターのプレータイムも長くなる。アレックス・カークの欠場と試合展開が影響し、26日のレバンガ北海道で37分コートに立っていたロシターは、中2日で35分と再び長時間の出場となったが、この過酷な状況を感じさせないエナジー溢れるプレーでチームを牽引した。
「特に水曜日の試合は選手にとってタフですが、前半は我々のディフェンスが機能しました。第3クォーターにブレックスの粘りで点差を縮められましたが、第4クォーター、ディフェンスから引き離すことができました。年内最後の試合に勝ててうれしい」
このように総括したロシターは、田中不在もあって次のことを意識していたと明かす。「ジョーダン(テイラー)をボールハンドリングで少し助ける必要がありました。また、チームが流れをつかめるよう、序盤からアグレッシブにプレーした」
この言葉通り、ティップオフ直後からエンジン全開で開始5分の間に3ポイントシュート2本を含む8得点を挙げ、A東京が先手を取る立役者となった。そして、1点リードの残り52秒にドライブからのナイスアシストで、セバスチャン・サイズの得点をお膳立てし、残り19秒にはプットバックによってリードを5点に広げる大きな得点と、勝負ところでさすがの働きを見せた。
「ブレックスとの選手たちとは多くの素晴らしい思い出がある」
12月中旬、秋田ノーザンハピネッツに痛恨の同一カード連敗を喫したA東京だが、その後は今回の勝利で6連勝。しっかりチームを立て直して2021年を終えたが、ロシターは結果にかかわらず切り替えることが長いシーズンを戦う上では重要と語る。
「勝っても負けても次の試合に向けて、すぐにギアを変える。勝っても大きく喜ばない。負けた時に反省点はありますが、そこまで落ち込まない。とにかく切り替えることは長いシーズンを戦うことは大事です。今日も勝ちましたが、次の茨城戦に向けて切り替えています」
冒頭で触れたように、ロシターにとっては看板選手として長らく在籍した宇都宮との初対決となった。宇都宮の安齋竜三ヘッドコーチは、「ライアンもいて、楽しい試合でした」と話し、他の試合とは違う感情があったことを認めた。
一方、ロシター本人は「いつもの試合と気持ちは一緒でした」と言う。もちろん、長らくともに戦った仲間との友情は変わらない。「ブレックスとの選手たちとは多くの素晴らしい思い出があり、試合後に彼らと会って話すことができたのは良かったです」と旧交を温めることができたことへの満足感はある。
ただ、「特にいつもと違う感情、モチベーションはありませんでした。とにかくアルバルクが勝つために何が必要かを考えてプレーしていました。それが大切です」とノスタルジーに浸ることはなく、自らの仕事を全うした。
試合後のロシターは欠場した田中のユニフォームを着てコートを一周し、ファンに挨拶。その姿は、アルバルク東京の新たな中心選手としてのイメージを完全に確立していた。