「今年こそはという強い思いが日本一に繋がったと思います」
福岡大学附属大濠(福岡)と帝京長岡(新潟)によるウインターカップ決勝戦は壮絶な守り合いの末、福大大濠が59-56で勝利し冬の頂点に立った。
前日の仙台大学附属明成(宮城)戦で38得点を挙げた岩下准平には当然のように厳しいマークが集まった。そのため、「昨日、9本の3ポイントシュートを決めて警戒してくると思ったし、今日は入るかなと引いた気持ちで入ってしまい、思い切りがなかった」と本人が語ったように、焦りから簡単なパスミスをしてしまうなど、ターンオーバーは6を超えた。それでも、チーム全体がシュートタッチに苦しむ中、岩下は8本中3本の3ポイントシュートを沈め、川島悠翔に次ぐ13得点、6リバウンド2スティールという数字を残した。
特筆すべきは試合終盤の大事な場面で決定的な仕事をしたことだ。試合は終始、福大大濠がリードする展開だったが、最終クォーターに逆転を許した。だが、その直後に岩下はスクリーンからマークを引きはがし、思い切りの良い3ポイントシュートを沈めて悪い流れを断ち切った。岩下も「3年間を締めくくるような3ポイントシュートが打てて良かった」と、このシーンを振り返っている。
逆転したもののリードはわずかに1点。予断を許さない状況だったが、ここで岩下が値千金のスティールに成功し、泉登翔がフリースローを獲得するきっかけを作った。「登翔が走っていたので、『そのまま行け!』って後ろから叫びました。登翔がフリースローを2本沈めてくれたので行けると思いました」。岩下がそう語ったように、結果的にこの2本のフリースローが決勝点となり、福大大濠が熱戦を制した。
全国の名門として知られている福大大濠だが、今回の優勝が28大会ぶり3回目と、決して優勝の数は多くない。それは留学生プレーヤーの台頭が少なからず影響しているが、だからこそ岩下は、留学生プレーヤーのいない福大大濠の今回の優勝を心の底から喜んだ。
「自分が大濠に来たのは留学生プレーヤーがいなくて、日本人選手だけで日本一になることを全国のみんなに見てほしかったから。1年生の時に準優勝で終わって悔しい思いをして、片峯(聡太)先生がメインに引き継がれてから優勝がなく、準優勝が4回ありました。今年こそはという強い思いがあって、その気持ちが日本一に繋がったと思います」
昨年の夏に左膝前十字時靱帯を断裂したことで、岩下は去年のウインターカップに出場できず「ケガで応援席から見守っていて、苦しくて悔しくて申し訳なさもあった」と回想した。その1年後、岩下は金色に輝くメダルを手に入れた。
「2年ぶりに東京体育館のコートでプレーできて、たくさんの人に感謝しかないです。優勝できて、夢のような結果で終われて、2021年を最高な締めくくることができました。チームメート、先生、保護者、様々な方に優勝という結果で恩返しできてうれしいです」