ブランドン・ナイト

デイミアン・リラードと渡り合い、18得点に5アシストを記録

マーベリックスはルカ・ドンチッチを含む複数の選手が健康安全プロトコル入り。ドンチッチは左足首のケガで5試合を欠場し、復帰間近となったところで今度は健康安全プロトコル入りし、合わせて8試合の欠場となっている。それでも絶対的なエースを欠く間もチームは奮戦し、現地12月27日のトレイルブレイザーズ戦に勝ったことでこの間の戦績を4勝4敗とした。

132-117で勝利したブレイザーズ戦では、クリスタプス・ポルジンギスが34得点9リバウンド5アシストを記録。ドンチッチに代わりチームを引っ張ったポルジンギスに次ぐインパクトを残したのが、10日間契約でチームに加わったブランドン・ナイトだ。

ナイトは2011年のNBAドラフトで全体8位指名を受けたポイントガードで、ピストンズ、バックス、サンズで得点力のあるガードとして活躍した。NBAで4年を過ごした2015年オフにはサンズと契約延長を結び、充実したキャリアを過ごしていたものの、2017年のオフに左膝の前十字靭帯断裂の大ケガを負う。2017-18シーズンを全休し、トレードされたロケッツでも復活を果たせず。膝のケアをしながらコンディションを整えるという名目でGリーグでプレーするようになると、なかなかNBAには戻って来れなかった。

その後も左膝の状態は思わしくなく、縦への鋭いドライブが戻らない。キャバリアーズ、ピストンズに在籍するもインパクトを残せず、2020年3月を最後にNBAの舞台から1年半以上も遠ざかっていた。

そのナイトが、健康安全プロトコル入りする選手が続出するマブスと10日間契約を結んでNBAに戻って来た。ブレイザーズ戦は復帰3試合目。チームと1週間を過ごすことで、それなりに連携も噛み合ってきた。それ以上に、縦へのドライブのキレが戻ったのが大きい。ベンチから24分出場したナイトは、NBAトップレベルのガードであるデイミアン・リラードとのマッチアップにも屈することなく、オフェンスの場面では鋭いドライブを何度も仕掛けた。相手がこれを防ごうと人数を掛け始めれば、ベテランらしく的確なパスをさばく。3ポイントシュート2本成功を含む18得点に5アシスト。特にポルジンギスとはホットラインをすでに確立しており、ピック&ポップから3ポイントシュートのアシスト、カットインするポルジンギスにパスを合わせるなど、呼吸が噛み合った。

「ここまでの長かった道のりを考えると、感傷的にもなるよ」とナイトは言う。「どうしてそうなったのかは考えないようにしていたけど、NBAのジャージーを着れない現実は僕にとっては屈辱でしかなく、涙を流すことも少なくなかった。エージェントからマブスとの契約が決まったと聞かされた時も泣いたけど、それは全く異なる涙だ」

ジェイソン・キッドはかつてバックスを率いていた時期、膝を壊す前のナイトを起用していた。その彼がナイトのNBA復帰に一役買ったのは間違いない。キッドはこんな表現でナイトを称えた。「プレーだけじゃなく、ロッカールームで声を掛けてチームの雰囲気を作る仕事もやっている。NBAは厳しい世界で、その中で揉まれていると『自分が上手くやって勝たなきゃ、稼がなきゃ』と意識しすぎて、チームメートとの関係作りを疎かにしがちだが、彼は違う」

健康安全プロトコル入りする選手が続出し、ロスター枠を拡大する緊急避難的なルール変更がなければ、ナイトのNBA復帰はこのままなかったかもしれない。今もまだ彼の立場は不安定で、ここからドンチッチを始め主力が戻れば、また契約を失うかもしれない。それでも、彼は偶然得たチャンスを最大限に生かし、NBAプレーヤーとしての健在ぶりをアピールしている。