岩下准平

第2クォーターの攻防が勝敗を分ける一つのカギに

インターハイ王者の中部大学第一(愛知)を下した福岡大学附属大濠(福岡)と、ディフェンディングチャンピオンの仙台大学附属明成(宮城)がウインターカップ男子準決勝で激突した。

最初に主導権を握ったのは明成。山﨑一渉への警戒が強まる中、隙を突いた山崎紀人が7連続得点を挙げる。湧川颯斗や川島悠翔のドライブを自慢の高さのあるディフェンスで防ぎ、菅野ブルースが3ポイントシュートを沈めて15-7と先行した。その後は互いにオフェンスがディフェンスを上回る点の取り合いとなったが、一渉が11得点、菅野ブルースが10得点とダブルエースが個人技で打開した明成が30-18とリードを広げて第1クォーターを終えた。

川島の3ポイントシュート、岩下准平のワンマン速攻で点差を1桁に戻した福大大濠は、今大会で強力な武器となっているオールコートのゾーンプレスを決行。これまでは後半の大事な場面で使ってきたが、福大大濠の片峯聡太コーチが「マイナス10点の想定が1クォーターに来たのかと思いながら、だからこそ引かずに一番自信のあるプレスをやった」と語ったように、最大の武器を出し惜しみせずに使った。

いきなりパスカットに成功した後はなかなかトラップにかけられず、裏を取られるなどイージーシュートを許し、再び2桁のビハインドを背負ってしまったが、このクォーターだけで14得点を挙げた岩下がタフショットを決め続け、相手のオフェンスリズムを崩したことで43-43と追いついて前半を終えた。

後半に入ると拮抗した展開が続いたが、調子の良い岩下がトップから連続で3ポイントシュートを沈め、終了のブザーと同時に副島成翔がリバウンドボールを押し込んだ福大大濠が65-59とリードして第4クォーターへ突入した。

そして、明成は最大の武器であるハーフコートのゾーンディフェンスを解禁した。だが、オフェンスリバウンドから川島にゴール下を許し、直後には福大大濠のゾーンプレスにかかり、湧川にバスケット・カウントを許してしまう。

ほぼ崩されずにタフショットを打たせ続けるなど、明成のゾーンは効いていた。しかし、菅野が沈黙して一渉頼みとなってしまったことで得点が伸び、悩み追いかける展開が続く。一渉の3ポイントシュートが決まり、2点差に迫ったものの、この試合で38得点を奪われた岩下に3ポイントシュートを決め返され、最後まで流れをつかむことができなかった。そして、残り31秒、湧川がドライブを決めて、3ポゼッション差にしたところで勝負アリ。最終スコア81-73で福大大濠が決勝進出を決めた。

明成はプラン通りに最終クォーターにハーフコートゾーンを使ったが、福大大濠は追い込まれたことで第2クォーターの段階でゾーンプレスを使用せざるを得なかった。だからこそ、明成の佐藤久夫コーチは第2クォーターにリードを守り切れなかったことを悔やんだ。

「ゲームを荒らしたいから必ず来る。大濠としてはこれ以上離れたらまずいと思ってプレスを仕掛けてきた。そこで丁寧に攻められずミスが続いた。中途半端なプレーが出てしまい、あそこは私もタイムアウトを取ってあげるべきだった。でもタイムアウトをナシでクリアしてほしいんですよね。その時が勝負の前哨戦だった」

インターハイ王者に前年度王者。死のブロックを勝ち抜いた福大大濠が頂点まであと一歩のところまで上り詰めた。