点差の広がらない大接戦、桜花学園が勝負どころで『堅守速攻』を見せる
ウインターカップの女子決勝、桜花学園(愛知)と京都精華学園(京都)が激突した。
ファーストプレーで朝比奈あずさがイゾジェ・ウチェへのパスを奪うことに成功。速攻に転じて伊波美空から朝比奈へのハイローと、理想的な形で桜花学園が最初の得点を奪う。しかし開始2分では、朝比奈のジャンプシュートをイゾジェに代わって入ったディマロ・ジェシカがブロックショットで叩き落す。
ゴール下が固い京都精華と前からのプレスが効く桜花、互いにスタイルは異なれどディフェンスで持ち味を発揮し、それをオフェンス側がプレー選択の良さで上回って得点を重ねる攻防に。平下結貴がこの試合最初の3ポイントシュートを決めた桜花学園が一歩抜け出すが、京都精華は瀬川心暖が3ポイントシュートを決め返すことで詰め寄った。
19-17と桜花学園がリードして始まった第2クォーター早々、桜花学園はドライブを仕掛けて転倒した伊波がベンチに下がる。朝比奈がディフェンスとの駆け引きを制した瞬間を見逃さずハイローのパスを出していた伊波が抜けて、桜花学園のオフェンスのリズムは悪くなった。これに対して京都精華が瀬川は2本目の3ポイントシュートで逆転に成功。さらにイゾジェを中心にオフェンスリバウンド3本を立て続けに奪って、最後は瀬川の3本連続となる3ポイントシュート成功で波に乗った。瀬川の勢いは止まらず、続く3ポイントシュートでファウルを誘ってフリースローで得点を伸ばす。交互に出るイゾジェとディマロの留学生コンビに頼らず、八木悠香を始め他の選手もボールに食らい付く京都精華がリバウンドから優位を作り出した。
桜花学園は苦しい時間帯をベンチから出た玉川なつ珠が積極的なシュートとドライブで繋ぎ、タイムアウトを取ってリバウンドの意識を修正。伊波が戻ったこともあってリズムを取り戻す。オフェンスリバウンドを狙う京都精華に競り負けず、リバウンドを死守しては速い攻めに転じて横山智那美と伊波が連続でドライブからの得点を決める。両者一歩も譲らず、30-30で試合を折り返した。
後半に入って一歩抜け出したのは桜花学園だった。留学生プレーヤーに入れるパスに手を伸ばして引っかけ、オフェンスリバウンドを奪われてもイージーなシュートを打たさないディフェンスから、平下が高いシュート力を見せ、横山も思い切りの良いアタックから得点を挙げる。平下のドライブから朝比奈に合わせてバスケット・カウントのビッグプレーも飛び出す。ただ、京都精華も留学生プレーヤーが封じられる中で八木悠香と堀内桜花の1年生コンビも積極性を出し、点差を広げさせなかった。
勝負を決めた朝比奈あずさ「周りのみんなに支えられて、感謝しかないです」
46-44と桜花学園の2点リードで勝負の第4クォーターへ。瀬川の3ポイントシュートが落ちたリバウンドを拾って速攻に転じた伊波が3ポイントシュートを決めると、朝比奈もミドルレンジのジャンプシュートを手堅く決めて55-48とし、京都精華にタイムアウトを取らせる。その後も桜花学園はディフェンスで隙を見せない。イゾジェへのパスは徹底的に止め、それまで繋がれていた八木や堀内のアタックにも対応。残り4分22秒で58-52とわずかではあるが価値のあるリードを作り出した。
京都精華はタイムアウトを取って、イゾジェのポストプレーではなく堀内とイゾジェのピック&ロールを選択。これは見事に決まったが、続くイゾジェのゴール下は3秒バイオレーションを取られて不発。対する桜花学園はイゾジェへのパスを引っかけて奪い、走った横山がフリースローでリードを広げる。
残り1分半で59-54、ここで堀内がこの試合最初の3ポイントシュートを決めて京都精華が2点差へと詰め寄ったが、横山がドライブから相手の狙うブロックショットをかわすフローターを沈める。最後の京都精華の攻めも、イゾジェへのパスを狙って奪い取って勝負あり。40分を通して点差がほとんど離れない混戦だったが、ディフェンスで崩れる時間帯のなかった桜花学園が61-57で勝利した。
リバウンドの数では54-38と京都精華が圧倒。ただ、桜花学園は23本のオフェンスリバウンドを奪われても、そこから粘りのディフェンスでセカンドチャンスポイントを容易に与えず、自分たちがディフェンスリバウンドを抑えた際には高確率でファストブレイクに繋いだ。
キャプテンの朝比奈は14得点5リバウンド。突出したスタッツを残したわけではないが、試合を通じてイゾジェとジェシカのマークを担当して相手のストロングポイントを抑えるとともに、勝負どころでアタックモードに入り、混戦を勝ちきる貴重な得点を挙げた。「周りのみんなに支えられて、感謝しかないです」と語る朝比奈は、「70勝のプレゼントができて良かったです」と、全国大会70回目の優勝を決めた井上眞一コーチに感謝した。