ジュリアス・ランドル&ケンバ・ウォーカー

「僕らは2度目のチャンスを手に入れたようなものさ」

このところのニックスには悪いニュースが多かった。開幕から5勝1敗と好スタートを切ったものの、その後は失速して勝率5割を切り、プレーイン・トーナメント圏内からも外れることに。鳴り物入りで加入したケンバ・ウォーカーの調子が上がらず、指揮官トム・シボドーは彼をローテーションから外し、アレク・バークスを先発に据えて攻守のバランスを整えようとした。しかし、バークスは先発に据えられると思い切りの良さが消えてしまい、思うように昨日せず。さらにセカンドユニットでオフェンスを引っ張る役割のデリック・ローズは左足首の手術を行い、少なくとも2カ月の長期戦線離脱となった。

『チームの顔』となったジュリアス・ランドルも苦しんでいた。昨シーズン、チームがプレーオフに返り咲く立役者となったものの、そのプレーオフでは大不振に陥り、今シーズンもその不振を引きずっていた。リーダーシップを取る選手が不振続きではチームも上向かない。

しかし、クリスマスゲームとなったホームでのニックス戦では非常に良い勝ち方ができた。もともとこのカードは、昨シーズンのプレーオフ、ファーストラウンドの再戦。マディソン・スクエア・ガーデンで全ニックスファンを敵に回し、敵意をエネルギーに変えてニックスを打ち倒したトレイ・ヤングを迎え撃つ、という筋書きだった。

しかし、そのヤングは健康安全プロトコル入りで欠場。クリスマスゲームは色褪せたものになり、スタンドには空席も見られた。それでも、マディソン・スクエア・ガーデンでホークスに勝つことには大きな意味がある。ケガ人続出でローテーションに復帰しているケンバが10得点10リバウンド12アシストのトリプル・ダブル、ランドルは9本中6本の3ポイントシュートを沈める25得点と本領を発揮し、一度もビハインドを背負うことなく101-87の完勝を収めた。

ランドルは「どこが相手かとか、試合の意味は考えないようにした。ただゲームを楽しみ、バスケへの愛情を持ってプレーしようとした。このところ難しい時期が続いたけど、今日はプレーする喜びを取り戻せた気がする」と語った。

ケンバは2日前のウィザーズ戦で44得点を叩き出したがチームは敗戦。今回はシュートタッチが良くなく自身は10得点だったが、チャンスメークの比重を高めることで他に4人の2桁得点を作り出した。44得点を挙げながら勝てなかったことに忸怩たる思いがあったのはケンバだけではなく、ニックスファンも同じだった。今回は『憎きホークス』に勝ったことに加え、2試合連続で地元出身のケンバの活躍があり、ファンにとっても大満足の試合となった。試合序盤には、不在にもかかわらずヤングを侮辱するチャントが沸き起こったマディソン・スクエア・ガーデンだが、勝利を決定付けた試合終盤にケンバがベンチに戻る時には、ケンバの名前がコールされた。

ケンバは「素晴らしい瞬間だった。ニューヨークという文字を胸に、このアリーナにいること自体が特別なんだ」と言う。

指揮官シボドーは彼をローテーションから外し、ケガ人続出でチームが苦しくなると再びプレーするよう求めた。実績のあるケンバにとっては屈辱だっただろうが、「僕は謙虚であり続け、厳しい状況を乗り越えようとした。神の助けがあって、古巣のセルティックスとの試合に先発として戻って来られた。望んでいた状況じゃないけど、不満というわけじゃない」と言う。

そんなケンバとのプレーをランドルは「一緒にやっていて楽しい」と言う。「僕らは2度目のチャンスを手に入れたようなものさ」。NBAではそう何度もチャンスが与えられるものではない。だからこそ、今回は失敗できない。ヤング抜きのホークスに勝ったからと大喜びはできないが、チームを取り巻く雰囲気を大きく向上させる1勝となった。ここからチームを上昇気流に乗せられるか、ケンバとランドル、2人のリーダーのパフォーマンスが問われる。