デマー・デローザン

『相手ディフェンスの強みを正面から崩す』大仕事をこなす

東カンファレンス1位と2位の直接対決となったネッツとブルズの試合は、終盤まで白熱した展開が続きましたが、デマー・デローザンの輝きによってブルズが制しました。大型補強によるジャンプアップは予想されていたものの、上位チームとの緊迫するバトルを制するには力不足と思われていたブルズが、接戦でも勝ち切れるチーム力を示しています。

ケビン・デュラントの圧倒的な個人能力が際立った試合展開に、ブルズはロンゾ・ボールやデリック・ジョーンズJr.、アヨ・ドスンムといったディフェンダーをぶつけ、ハードなディフェンスからのカウンターに勝機を見いだしました。デュラントにはダブルチームを仕掛けてでもパスを促し、そこからのローテーションディフェンスによってネッツのフィールドゴール成功率を41%に抑えたことが、この試合最大のポイントでした。ハードワークこそがチームとしてのブルズの特徴です。

一方でハーフコートオフェンスになると、ニコラ・ブーチェビッチの万能性で多用なプレーができる強みはあるものの、局面では個人技に頼る形が増えます。トランジションに持っていけないと、両チームがエースの個人突破に頼っており、同じことを繰り返せばデュラントとジェームス・ハーデンを擁するネッツに軍配が上がると思われました。

特に最近のネッツはラマーカス・オルドリッジをビッグマンの中核に位置付けたことで、スクリーンと正確なミドルシュートでエースを助けるプレーを増やしています。ブルズのハードなディフェンスに対して『エースの負担を減らす』のは理にかなったチームオフェンスです。あくまでもエース中心に考えられているネッツに比べると、ブルズはデローザンとザック・ラビーンが1on1を挑むのが中心で、苦しい雰囲気でした。

特にデローザンは高さのあるデュラントにマッチアップされていたことで、得意のジャンプシュートが封じられる怖さがありました。論理的な手法としてはスクリーナーを使ってマークマンを変更させるのが一般的ですが、ブルズのオフェンスはシュート能力の高いラビーンの方にスクリーナーを用意することが多く、デローザンは警戒された中で真正面からのアタックを繰り返し強いられました。

ここで1on1能力の高さを示したデローザンは、デュラントのファウルを引き出しながらのドライブも決め切り、第4クォーターだけで13得点を奪うと、迎えた残り17秒にドライブで3人をひきつけてのキックアウトパスでロンゾを完全なフリーにし、試合を決める3ポイントシュートをアシストしました。ハイレベルな戦いで勝敗を決める個人能力が不足していると言われていたブルズですが、ネッツとの直接対決でデローザンの個人技で試合を決めたのです。

31得点を奪ったラビーンに対してデローザンは29得点に留まり、数字の上ではダブルエースのブルズですが、効率的に得点を取っていくラビーンに比べて、デローザンは『相手ディフェンスの強みを正面から崩す』役割を担っており、難しい状況での得点能力が光っています。

チームとしてハードなディフェンスを武器に勝率を挙げているブルズですが、オフェンス面でデローザンが決め切ってくれるからこそ接戦を制するようになりました。開幕前に懸念されていた上位チームとの直接対決で、個人としての強みを見せつけたことで、ブルズへの期待はさらに膨れ上がっています。