「いつ得点を狙い、いつプレーメークをするのか……」
16勝7敗で激戦の東カンファレンス首位をキープしているにもかかわらず、ネッツは常に懐疑の目を向けられている。カイリー・アービングはワクチン接種の問題でチームを離れており、戻って来る目処は立っていない。『ビッグ3』の一角を欠きながらチームは大健闘しているのだが、ブルズに2回、ウォリアーズにサンズ、ヒート、バックスと『本当の強さ』が問われる強豪との戦いを落としていることで心象が悪くなっている。
そんなネッツでジェームズ・ハーデンが苦しんでいる。カイリー不在を埋めるべくゲームメーク優先へとスタイルを変え、ボールとファウル基準の変更にも順応しなければならない。そして同じ優勝候補であっても、ロケッツ時代はチャレンジャーの立場だったのに対し、ネッツでは『優勝しなければ失敗』と見なされる重圧とも向き合わなければならない。
昨シーズン終盤はケガを抱えながら強行出場を続け、本来のパフォーマンスができなかった。そして今は、好不調の波の大きさに苦しんでいる。前回敗れたサンズ戦では12得点13リバウンド14アシストを記録しながらフィールドゴール15本中4本成功(26.7%)と低調で、ターンオーバーを7つも記録。この時、ハーデンは「いつ得点を狙い、いつプレーメークをするのか、いつも悩みながらだ」と自身の置かれた立場の難しさを語っている。
続くニックス戦では34得点10リバウンド8アシストを記録して勝利の立役者となったが、12月4日のブルズ戦では再び「悩みながら」のプレーをしてしまい、フィールドゴール21本中5本成功(23.8%)の14得点というひどい出来に。この試合では14アシストを記録した一方で課題のターンオーバーがゼロで、プレーメークに徹した形だが、肝心の得点が伸びないのでは相手にとって脅威とはならない。
ここまで22試合でプレーして、20得点を超えたのは11試合だけ。これを十分と見なすかどうか、参考にすべきは過去の数字だ。昨シーズンが44試合中33試合、ロケッツにいた一昨シーズンは68試合中59試合、さらにさかのぼると78試合中74試合、72試合中68試合となっている。ロケッツ時代のハーデンは、NBAでレブロン・ジェームズと並ぶ『鉄人』で、絶対的なエースとしてハードスケジュールをこなしていた。だが、32歳になった今のハーデンに同じことはできないのかもしれない。
ブルズ戦に敗れた後、ハーデンは「僕のせいだ」と自分を責めている。
「あまりに多くのチャンスを外してしまった。決めていれば試合を落ち着かせることができていた。チームは試合を通じて良い試合ができていた。でも、終盤に相手がタフショットを決めたのに対し、僕はレイアップを落としてしまった。何があってもアグレッシブに行こうと決めていて、アタックしてアタックしまくったんだけど、シュートが決まってくれなかった」
もっとも、周囲はハーデンのせいで負けたとは考えていない。ケビン・デュラントは「僕がもっとシュートを打つべきだった。そうすれば彼の負担を軽減できた」とハーデンを擁護した。
結局のところ、真価が問われるのはプレーオフだ。レギュラーシーズンを通じてあるべきプレースタイルを探り、完成させなければならないが、同時にハムストリングを痛めた昨シーズンの失敗を繰り返さないことも大事になる。苦しいこの時期が半年後の成功に繋がるかどうか。ハーデンにとってまず大事なのは、自分を信じることだ。