福岡第一

ゲームキャプテンの佐藤涼成、チームキャプテンの早田流星、そして2年生ながらも主力を務める轟琉維は部員数が100人を超える福岡第一においても欠かせない存在だ。佐藤と轟は福岡大学附属大濠との『福岡決戦』で攻守に活躍し、勝利の立役者となった。チームの精神的支柱である早田はリハビリのため、それをスタンドから見守った。対人練習ができるまでに回復した早田はバスケの楽しさを再認識し、佐藤と轟は主力としての責任感をさらに強め、ウインターカップに臨む。

「身体もメンタルもこの1カ月でしっかり仕上げられるように」

──『福岡決戦』に勝利し、福岡県1位でウインターカップへと進むことになりました。早田選手はスタンドからどのような気持ちで観戦していましたか?

早田 試合に出たかったのはもちろんですが、べンチにいたいと思っていました。でも井手口(孝)先生に「他の3年生や1年生に経験させたいから、お前は今回ベンチから外す」と言われました。それでも、「お前はキャプテンらしく堂々としていろ」と言われたので、安心して試合を見ることができました。頼もしい仲間がいるなって、あらためて思いました。

 インターハイ予選の決勝は最後のシュートを外してしまい、自分のせいで負けてすごく悔しい思いをしました。今回の試合は井手口先生からガードの得点がカギだと言われていたので、いつもよりシュートを狙っていきました。特に第4クォーターでは多くのシュートを決めて、自分の仕事ができて良かったです。

佐藤 あの独特な空気感の中で応援したり、試合に出せさてもったりもしてきて、やっぱり『福岡決戦』は特別です。あの不思議な空気感で試合ができて、勝ててすごくうれしかったですが、ウインターカップまで時間がないのですぐに切り替えました。身体もメンタルもこの1カ月でしっかり仕上げられるように、厳しい練習を頑張っています。

──早田選手はようやく対人練習を開始したとのこと。ウインターカップに間に合ったことはチームにとっても大きいですね。

早田 近くの河川敷を走ったり、トレーニングを続けて筋力だけは絶対に落とさないようにしてきました。フットワークだけやっていた感じでようやく本格的に動けるようになって、今はバスケが楽しいです。

佐藤 去年からずっと一緒にスタートでプレーしていますが、そこまで大きくはないあの身体で泥臭いところを頑張ってくれるのはすごいと思います。流星が戻ってくればさらに良いディフェンスができるので、自分たちの持ち味である堅いディフェンスからの速攻と、もっと強くなると思います。

早田流星

早田のスキンシップに2人は困惑?

──キャプテンの2人はお互いをどのように見ていますか? また轟選手にとって2人はどんな存在でしょう?

早田 佐藤は相手の意見を受け入れた上でしっかりと自分の意見を言うタイプです。言い争ったりぶつかることはあまりなく、意見交換はよくしていました。

佐藤 基本的な生活面ではしっかりしていて、良い環境で育ってきたんだなと思います。

 早田さんは試合中は本当に厳しくて、すごく男気があって頼もしい選手なんですけど、コート外では甘えてきたり、急にハグしてきたりするので、そういうところは面白いと思います。

佐藤 あの身体で自分にも抱きついてきたり、キスしてきたりします(笑)。嫌ですが、本気で嫌がるほどではないので、チームの雰囲気というかチームの笑顔をいっぱい作ってくれている部分はあるんじゃないかなと思います。

早田 自分は第一印象でみんなに怖がられていると思うので、自分から後輩に話しかけたりして、雰囲気を良くしようとしています。佐藤はあまり周りからいじられたりちょっかいを出されたりしないタイプなので、あえて僕が絡むのですが、それで喜んでいるところがかわいいと思います(笑)。

──仲が良いということにしておきましょう。特に『福岡決戦』では佐藤選手と轟選手の活躍が勝敗を分けましたが、お互いに意識していることはありますか?

佐藤 期待できるプレーヤーとしてメディアにも取り上げられていますし、いずれは必ずライバルという立場になっていくと思います。琉維が良いところで点数を取った時は俺も取ってやるぞという気持ちになります。そういう気持ちはこれからも必要になってくると思うので、この関係性を崩さないように頑張っていきたいです。

 涼成さんが困った時に自分が得点を狙いにいって、しっかり涼成さんを助けたいと思っています。でも観客を魅了したいという思いも少なからずあるので、僕が1番でやっていきたいと思います。

佐藤 琉維は僕も驚くほどのテクニックを持っているんですけど、ディフェンス面だったり、力強いプレーというのは、まだまだ自分の方が上だと。まだ琉維には負けない自信はあります。

福岡第一

「最後は笑って井手口先生を胴上げしたい」

──良いバランスで成り立っているようですね。あらためて、ウインターカップに向けた意気込みをお願いします。

早田 1年生の時はベンチに入れずに応援席で見ていましたが、どのチームも圧倒して本当にカッコイイ、ああいうチームになりたいと思いました。そして、去年はスタートで出させてもらいましたが、自分が最後にシュートを落としてしまってチームを勝たせることができなかったです。親を含め、自分のプレーを楽しみに待ってくれている人がいて、そういう人たちに「早田がいるとチームが違う」と思ってもらえるようなプレーがしたいです。3年生の思いも背負い、優勝して井手口先生を胴上げできるように頑張りたいです。

 去年は試合に出れませんでしたが、ウインターカップ独特の緊張感だったりを味わうことができて、すごく良い経験になりました。ウインターカップでは自分が得点源となり、第一らしい『堅守速攻』で日本一になれるように頑張っていきたいと思います。

佐藤 1年生の頃は河村勇輝さんの代で、僕だけベンチに入れてもらい試合にも出させてもらいました。あの代は優勝したんですけど、僕は思うようなプレーができず、自分の評価は最低なラインでした。去年のジュニアさん(ハーパージャン・ローレンス・ジュニア)たちの代はスタートで出させてもらいプレー時間も増えましたが、2年生で試合に出ている自分と早田が力を全然発揮できずに明成に負けてしまいました。ジュニアさんたちへの恩返しも含め、チーム100人の力を合わせて絶対に優勝したいです。最後は笑って井手口先生を胴上げしたいです。