大澤徹也

昨年の東山は世代No.1ポイントガードの米須玲音を擁し、ウインターカップで準優勝を果たした。ファイナルを経験した主力が残っている強みはあるも、米須が抜けた穴は想像以上に大きく、インターハイ出場を逃した。それでも、伝統である『攻撃に特化した』チーム作りを進め、楽しみながらウインターカップの頂を目指す。

洛南に敗れるも「すべてがマイナスだったというイメージではない」

──昨年のウインターカップで準優勝し、多くの注目を集めました。新チームとなって以降はどのようにチーム作りを進めてきましたか?

去年のウインターカップは組み合わせ的にも厳しい状況の中、すべてをクリアして最終日まで残るという目標を達成できました。すごく達成感のある大会だったので、やっぱり優勝したかったという思いはありますね。新チームはスタートで出ていた2人が残るのでその良さを残しながらも、いろんなことをしないといけないと思っていました。

コロナで練習が制限される中、体幹などの省いてはいけない練習をどうしても省かなきゃいけなくなり、その関係のせいかケガ人が多く出ました。上手くいかないことの対応に追われる1年で、僕の人生で初めてと思うくらい、苦しいシーズンになりました。

去年のチームと大きく変わったのはガードで、清水拳のスピードを生かした速攻が武器になると思っていました。それでも、やっぱり去年の残像が残っているというか、良いパスが来るんじゃないかと待ってしまっている状況がすごく多かったんです。そういう意味では、大きく変えたほうがいいのか、僕としても悩みました。清水の速攻の部分では上手くいっていたんですけど、ハーフコートが難しかったです。あれだけゲームを作れるガードがいたので、米須の存在は大きかったとあらためて思いました。

──インターハイ予選に続き、ウインターカップの決勝でも洛南に敗れました。その結果をどのように受け止めましたか?

今年も2枠出れたので、そういう意味では心に余裕がある分、緊張感が足りなかったと思います。京都での最後の試合に勝ち切ってこそウインターカップに繋がると常日頃言っていたので、この負けは受け止めなきゃいけません。ただ、インターハイと比べると戦えた手応えもあり、もっと良くなる部分が見えたので、すべてがマイナスだったというイメージではないです。

気持ちが足りないのは感じていたので彼らと向き合い、こちらの要望と彼らの苦しんでいる部分も引き出して話をしました。これでやっとスタートラインに立ったのかなと。そういう意味では、膿を全部出して「さぁここから1カ月半でこれだけ伸びたぞ」というところを見せてやりたい、今はそういう思いが強いです。

大澤徹也

「最後に話し合いをした時に彼らの覚悟も決まりました」

──有意義な話し合いがなされ、チームとしてようやくまとまったということですね。

大きく言えば、個で頑張って打開するだけで、チームになっていなかったんです。個は個でも裏付けがチームじゃなければダメだというところはすごくこだわって話しました。

受験があるので勉強で進む生徒たちは一度引退させるのですが、当然戻ってきてもユニフォームは着れないような状況なんです。それでも最後までやりたいと志願する生徒たちは戻すのですが、後輩にチャンスを与えて引退するという選手も出てきました。チームとして輪になってきたと、すべてが繋がったと感じるようになりました。

──以前はチームになれていなかったということですが、それはメンタルの要素が大きかったのでしょうか?

メンタルというか、どこか人任せのように映っていました。みんな仲は良いんですけど、本質的な核心を突いた指摘ができない。そこはバチバチの喧嘩ができるぐらいぶつかってほしい思いがあるんですけど、そういう感じがなかったんです。それが最後に話し合いをした時に彼らの覚悟も決まりました。

キャプテンの堀陽稀、エースの西部秀馬、特にこの2人の変化が大きいですね。堀は膝をケガして、リハビリを終えた後に違う部分を痛めたりしながらも、ケガを克服してきたのでメンタルの面で非常に強くなってきたと感じます。だけど、足りない部分もたくさんあって特に洛南戦は一番本人が責任を感じていると思います。去年からスタートで出ていて、3年生にやってもらったことを同じように還元しようと、チームを引っ張る思いを強く持っています。その部分はすごく評価できるんですけど、まだまだ優しいのでもうちょっと期待という感じですね。

西部はこのチームのエースなので、良くも悪くも西部次第という部分もあります。彼がチームのためにいろんな事ができるようになれば、もっと良くなるんじゃないかと考えていましたが、自分の活躍のみにフォーカスすることが多く、自分の活躍がチームの勝利に繋がっていなかったんです。ただ、最後の話し合いで覚悟が決まって、ようやくスイッチが入りました。ウチはいつもウインターカップ直前のこの時期なんですよね。最後の最後の切羽詰まったところで覚悟が決まってさあやるぞと。もっと早く気づけよって思うんですけど(笑)、それもこれも全部ひっくるめて東山なんじゃないかなと思います。

大澤徹也

「東山と言えばハーフコートオフェンスとなってほしい」

──ウインターカップでウチのここを見てくれというポイントはどこになりますか?

ウインターカップを通じて、良い伝統を残していけるようにしていきたいです。やっぱり攻撃に特化したチームを作りたいというのは揺るがないですね。ハーフコートオフェンスへのこだわりは強く、分かっていても止められないチームを作りたいと思っています。

──Bリーグも含め、現代バスケではディフェンスを優先する傾向がありますが、その中でオフェンスに振り切るのはなかなかできない決断だと思います。

オフェンスの指導に特化したコーチは少ないと感じていて、自分がそういう存在になれればと思っています。やっぱりバスケットって点を取るのが一番楽しいじゃないですか。子供たちもオフェンスの方が動くんですよ。元々この年代に点の取り方とかオフェンスを教えたいと思って、高校のカテゴリーを選びました。それを求めて来てくれる子も増えたので、これは譲れないというかブレちゃいけないと思いました。ピック&ロールとかハーフコートバスケットに特化してから結果が出始めたので、東山と言えばハーフコートオフェンスとなってほしいですね。

──去年の米須君フィーバーもあり、応援してくれる人が増えたと思います。あらためてウインターカップへの意気込みをお願いします。

去年のチームがきっかけとなり、今まで以上に東山というチームを知ってもらえたというのは感じます。バスケットを見たことがない人がたまたまウインターカップの決勝戦を見て、「明日から仕事を頑張ろうと思いました」という言葉ももらいました。そういう意味では僕らがやっていること、子供たちがやっていることは人の心に伝わるんだと実感しました。あれで勝っていたら一番カッコ良かったんですけどね(笑)。それでも我々がやっている事は間違っていないと思えたし、応援してもらえることはすごくありがたいと思いました。

一番楽しむと言ったらおかしいかもしれないですが、このウインターカップを一番楽しんだチームがウチだと言われたいです。勝ちにこだわりながらも、見てる人たちも楽しいと感じ、「やっぱり東山ってこうだよな」って思われるような試合をしたいです。予選で負けてこのままじゃ終われない気持ちもありますし、「東山頑張ったね」というふうに応援してもらえるような準備をしていきます。