[CLOSE UP]田臥勇太(栃木ブレックス)「リーグを引っ張る」という自覚は強くなっています

2016/10/05
Bリーグ&国内
576

文=丸山素行 写真=野口岳彦、B.LEAGUE

今日が36歳の誕生日「歳は関係ないですね、ここまできたら」

先週末、栃木ブレックスと千葉ジェッツの試合が行われた船橋アリーナは2日連続で最多観客記録を更新。両チームの熱いブースターで満員になったアリーナで、栃木は連勝を飾った。

千葉との連戦で注目されたのは、田臥勇太と富樫勇樹の『ポイントガード対決』だった。結果だけを見ればチームを連勝に導いた田臥に軍配が上がったと見ていいだろう。

得点能力もありスピードもある富樫のピック&ロールからの展開をどう抑えるか。「僕もそうですけどチーム全員でどう抑えるか、これが対策の一つでした」と田臥は明かし、「昨日今日と2桁得点を入れられてしまったので、もうちょっと抑えられれば」と反省も口にした。

土曜の試合後には富樫とのマッチアップについて「やっていて楽しい」とコメントした田臥だが、それでも『ポイントガード対決』の構図に必要以上に引っ張られはしない。田臥の口数が増えたのは、対戦相手ではなくチームメートの古川孝敏へと話題が移ってからだ。

古川を中心にチームとして3ポイントシュートがなかなか決まらなかったことについて、土曜の時点で田臥はこうコメントしていた。「気になってないですね。打てているので。大事なのは入るか入らないかではなく、打つか打たないか。入らなかったとしても打ち続けろ、と言います」

その結果、2戦目では第4クォーターの勝負どころで古川が立て続けに重要な得点を決めて、一気に勝利を引き寄せた。チームリーダーである田臥の「打ち続けろ」という言葉が実を結んだ瞬間だった。

「彼の良さは、得点が欲しい時に思い切り打つことができるところ。ようやく自分のリズムをつかめました。引き続き彼のスタイルでやってほしいと思います。今日は本当に良いところで決めてくれました」

開幕直前まで日本代表の一員としてイランに遠征し、厳しい戦いに身を置いていた古川。体重が数キロ落ちてしまい、コンディションがなかなか戻らなかったそうだが、そういう時こそ田臥が精神的にサポートしてくれるのはありがたいに違いない。

「新しい歴史の1ページを経験できることに感謝」

栃木ブレックスは開幕戦こそ秋田ノーザンハピネッツに不覚を取ったが、その後は3連勝で通算成績を3勝1敗に伸ばした。まずは好調なスタートを切ったと見ていいだろう。

ここまでの4試合、手応えを得られたのはやはり千葉との第2戦、最終クォーターの10分間だ。攻守の歯車が噛み合い、チーム一丸となってプレーできた結果が、鮮やかな逆転勝利だった。

「抑えて得点して、抑えて得点して。そういうところで、どこを起点に攻めるかだとか、簡単にシュートを打たせないことだとか、リバウンドをしっかり取るところだとか、細かいところの40分間の積み重ねが最後にどう影響するかがバスケットです。第4クォーターは10分間、集中力を切らさず全員がやれたと思います」と田臥は振り返る。

超満員となったアウェーゲームにやりづらさを感じるのでは、との質問に田臥は「アウェーゲームでも満員の会場でバスケットができるのはうれしいです」との答えを返した。「ブレックスのファンも栃木から駆け付けてくれて、ベンチの後ろあたりは黄色で染めてくれたので」と、自らのファンへの感謝も忘れない。

「試合を見に来たいと思ってもらえるように毎試合やらないといけない。こうやってたくさんのお客さんを見ると改めてそう強く思います」

2004年にサンズの開幕ロースターに入ってから早12年。日本では他の誰も持っていない経験を持つ田臥は、今日(10月5日)で36歳となった。

プレーの面では年齢を感じさせないが、自らのキャリアに対する意識や責任感は増している。Bリーグが始まった今、チームだけではなくリーグの「顔」として、バスケ界を牽引する立場をより強めているのが田臥勇太というプレーヤーなのだ。

「リーグを引っ張っていく、という自覚は年齢を重ねるたびに強くなっています」と、日本バスケットボール界のリーダーは言う。「それがなかったらやっていないと思います。年を重ねてもこうやって若い選手と戦えることはありがたいですし、自分にとっても毎試合競争できることは本当に楽しいです。Bリーグが開幕して新しい歴史の1ページを経験できることに感謝しなきゃならないと思っています」

変わるバスケットボール界、変わらない田臥勇太

36歳。NBA挑戦で騒がれた頃とは表情もプレースタイルも変わっている。鋭い眼光を放っていた長髪の若者は、さっぱりとした大人のプロフェッショナルへと変貌した。プレースタイルも年々進化している。老いは決して感じさせないが円熟味たっぷりで、彼がボールを持つと観客のテンションが一段上がるのが感じられる。

OQT(五輪世界最終予選)の前のことだ。とある記者が「キャリアの集大成となる大会に向けて、どんなお気持ちですか?」という質問を田臥に投げた。田臥は素で「集大成?」と首をかしげ、「集大成、ではないですね」と苦笑した。自分のキャリアをどう終えるか、彼自身まだ考えたこともないのだろう。当然、それでは「集大成」にはならない。

試合後の取材対応に、田臥は決まって一番遅く現れる。大物ぶるわけではない。身体のケアにじっくりとと時間をかけるからだ。それから決まって「お待たせいたしました」の一言とともに現れ、丁寧に取材に応じる。Bリーグになって取材に来るメディアの数が増え、取材時間が長くなっても、対応の丁寧さは変わらない。田臥はこれからも日本のバスケットボール界を引っ張っていく。いつまで? それを考えるのはまだ先の話だ。