ザイオンとイングラムを擁しながら2シーズン連続でプレーオフ出場を逃す
フィールドゴール成功率61%で27.0得点という規格外のスタッツを残したザイオン・ウィリアムソンは、2年目にしてリーグで最も止めることが難しいモンスターになりました。ブランドン・イングラムと2人で平均50得点を上回り、リーグ屈指のスコアリングデュオはペリカンズの輝かしい未来を担っています。
しかし、チームの成績は31勝41敗に留まり、プレーオフどころかプレーイン・トーナメント進出にも手が届きませんでした。強力なワンツーパンチがあっても勝ち切れなかったのは、ディフェンス面に大きな問題を抱えていたからですが、周囲をエリック・ブレッドソー、ロンゾ・ボール、スティーブン・アダムスとディフェンス能力に定評のある選手で固めていただけに、これだけ守れない状況は不可思議でもありました。ペリカンズは攻守において『個人能力が高いだけでは勝てない』ということを示しています。
特に目立ったのは試合運びの稚拙さで、第1クォーターの成績ならリーグトップクラスであるものの、後半になるにつれてトーンダウンしてしまい、攻めのリズムが悪くなって点が取れなくなると、そこで支えきれずに攻守ともに崩壊してしまう傾向が強く出ていました。
選手それぞれのシュートパターンが限られており、試合開始から終了まで同じようなプレーを繰り返すため、次第に対応されていくのはペリカンズの明確な弱点でした。ザイオンのアタックやイングラムのジャンプシュートは『分かっていても止められないプレー』であり、同じパターンでも一定の得点を奪えてしまうことがチームとして悪い方向に出たのかもしれません。
アンソニー・デイビスを失った後に再建に入り、ドラフト指名権や若手有望株を多く集めてきたこともネガティブに働いたかもしれません。昨シーズン、チームを救う活躍をしたのはドラフト外で加入した23歳ナジ・マーシャルでしたが、彼には驚くような武器はなくとも、球際の激しさと状況に応じて役割を変えられる柔軟性でブレイクしました。明確な主役であるザイオンとイングラムがいるからこそ、周囲にはハードワークと判断力のある選手を揃えた方がチームとしての機能性は高まります。
今オフはロンゾが移籍したポイントガードにデボンテ・グラハムとトーマス・サトランスキーを補充しました。個人能力としては劣るかもしれませんが、プレーの選択肢が多く、相手の逆を取っていくタイプだけにオフェンスに変化をもたらすことが期待できます。また、様々なポジションをこなすベテランのギャレット・テンプルも獲得しており、弱点を補う補強ができています。
明確な戦力アップとなる補強はしていないものの、個人能力よりも試合運びに課題のあったチームだけに、流れを変えられる選手が増えたことはプラスです。ただ、ロスターの半分以上は3年目までの若手が占めており、24歳のイングラムがチームで3番目にNBAキャリアが長いほどの『超』が付く若手チームだけに、主役となる2人は若くてもリーダーシップを取る必要があります。
昨シーズンはザイオンの家族から移籍希望の発言が出て話題となりました。若いチームだからと言って負け続けてもオーケー、というわけには行きません。新ヘッドコーチのウィリー・グリーンの下、ザイオンとイングラムの武器を有効活用した勝ちパターンを構築する必要があります。