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「ダンカンの抜けた穴を埋めるためではなく、勝つために来た」

レイカーズで2度(2009、2010年)の優勝を経験したパウ・ガソルは、今オフ、これまでライバルチームとして長年対戦してきたスパーズへと移籍した。次代のNBAを引っ張るカワイ・レナード、ラマーカス・オルドリッジを支えるベテランとしてチームから期待されているガソルがスパーズに移籍した理由は、大きく分けて2つ。

一つ目は、もちろん3度目の優勝達成のため。そしてもう一つは、1999年から現在まで優勝5回を誇り、19シーズン連続プレーオフ進出を果たしているチームの成功の秘訣を自分の目で確かめるためだった。

トレーニングキャンプ前のメディアデーで、ガソルは「どうやってこれだけ長く、安定した成績を残せるかを学びたい」と語った。

「多くのチームがスパーズのやり方を真似しようとしてきた。だから他チームはスパーズのスタッフを引き抜くんだ。豊富な経験、優勝経験を併せ持つこのチームは、非常に稀な存在だからね」

ガソル本人が移籍を決めた要因を明かしたとしても、周囲は7月に引退を発表したティム・ダンカンの代役としてスパーズが獲得したと考えている。それもそのはず。引退の可能性は分かっていたことにせよ、ダンカンという代えの利かない存在がいなくなった穴を埋められる選手など限られている。

経験、スキル、サイズ、バスケットボールIQなど、ダンカンに近いバランスを誇るフリーエージェントはガソルしかいなかった。

当然、ガソルには「ダンカンの代役」という点についての質問が飛んだ。しかし本人は、「僕は彼の抜けた穴を埋めるために移籍したわけではない」と、返答している。

「チームの皆とベストを尽くすために移籍した。何が目標かって? もちろん優勝だよ」

レイカーズでは、コービー・ブライアントの勝利に対する強い意欲、執着をまざまざと見せつけられ、ブルズとレイカーズで2度のスリーピート(3連覇)という偉業を成し遂げたフィル・ジャクソンの哲学を吸収した。名門ブルズでの2年間を挟み、キャリアの最終地点となるかもしれない新天地では、ジャクソンと並び称される名将グレッグ・ポポビッチの帝王学に触れる。

NBAきっての知性派らしく、移籍先を選択するのにも確固たる理由が存在する、ということだ。

長年のライバルであったダンカンの代わりを務めることは勝つことに直結し、この的確な補強こそが常勝と呼ばれる秘訣でもある。