「スーパーヒーローを作り上げているのは日々の努力だ」
バックスが本拠地を置くのはウィスコンシン州の州都ミルウォーキーで、州の第2の都市であるマディソンにはウィスコンシン大マディソン校がある。先週末、ここで2020年の卒業生の卒業式が行われた。新型コロナウイルスのパンデミックの最中、学生たちは卒業はしたものの式典は行われず、卒業証書の授与もオンラインでの実施となった。それでも今回、1年遅れで非公式ではあるが大学が主催する卒業式が行われた。それがなぜ『バスケット・カウント』のニュースになるのか。来賓として呼ばれたのがバックスのパット・カナートンで、8000人の卒業生とその家族を前に素晴らしいスピーチを披露したからだ。
「僕はここの卒業生でも、地元の出身でもない。今日は上手く話せる自信がなくて緊張していたから、頼りになるヤツを連れてきた。ラリー・オブライエン・トロフィーだ。NBAで優勝したと分かれば、そう嫌われることもないと思ってね」と、カナートンはNBA優勝トロフィーを掲げ、聴衆の心をつかんだ。
カナートンはNBAキャリア6年の28歳。昨シーズンはセカンドユニットのシューターとして69試合に出場し、22.8分の出場で6.8得点を記録。サンズとのNBAファイナルでは6試合中3試合で2桁得点を記録(平均9.2得点)しており、大舞台での勝負強さでバックスの優勝に貢献した。
「真面目な話、僕はNBAでプレーするようになって、スーパーヒーローたちと日々一緒に過ごすようになった。彼らはコートに立つとすさまじい身体能力で素晴らしいプレーを見せる。半端じゃないプレッシャーがかかる中で、責任を果たして勝利をつかむ。みんなも、いろんなプロスポーツのMVPを見ているよね。クリスチャン・イエリッチ(MLBのブルワーズ所属)、アーロン・ロジャース(NFLのパッカーズ所属)、そしてバックスのヤニス・アデトクンボ。みんなウィスコンシン州のMVPプレーヤーだから、こういうスーパーヒーローのことはよく知っているよね」
ここで他競技のスター選手の名前を挙げられるのは、大学までバスケと野球の『二刀流』で、MLBからのドラフト指名も受けたカナートンらしい。地元のヒーローたちの名前が挙がって盛り上がる聴衆に、カナートンはこう続けた。
「僕はヤニスをすぐ近くで見ていて分かった。スーパーヒーローを作り上げているのは日々の努力だ。トレーニングジムと練習場、日々のルーティーンで試合に向けた準備をしている。僕より強く、僕より速く、僕より優れた選手なのは、それだけの努力を日々しているからだ。不可能とも思えるような努力を毎日続けているからこそ、今の彼がある。僕はキャリアの早い段階でそれを理解して、より良い自分を作り上げるチャレンジに取り組むようになった。明確な目標を設定すること、24時間を最大限に活用すること、自分の存在感を示し、周りの人たちと良い関係を築いて、家族や仲間を大切にすること。このすべては僕がスーパーヒーローから学んで取り入れたことだ」
そして彼は、長い隔離生活を終えて社会へと飛び出していく若い世代へとこう語りかけた。
「この素晴らしい大学を卒業したみんなには、これから様々な形でスーパーヒーローになる可能性がある。この講演で覚えてもらいたいのは、それを価値あるものにするのは旅の過程だということだ。この10年間、僕が見てきたスーパーヒーローは結果にこだわることなく、自分を向上させるプロセスに集中していた。自分の技術を高め、より良い人間になり、そしてその過程を楽しんでいた。みんなも僕と同じように、彼らから学べるはずだ。君たちが何かを成し遂げるのを楽しみにしているよ」