クラッチタイムに『東藤タイム』炸裂、オータムカップ優勝を決める
Wリーグのオータムカップは全日程を終了した。Aブロックではトヨタ自動車アンテロープスが、Bブロックではトヨタ紡織サンシャインラビッツが優勝している。
Bブロックの決勝、トヨタ紡織vs日立ハイテククーガーズは最後までもつれる激闘となった。第4クォーター開始時点でトヨタ紡織は55-62と7点ビハインドを背負っていたが、相手より走り、ボールに食らい付く積極性で流れを呼び込む。日立は良いスペーシングから効率の良いバスケをしていたが、終盤になってスタミナが落ちたことで、トヨタ紡織のプレッシャーをかわせなくなる。
しかし、トヨタ紡織はプレッシャーこそ効いてもディフェンスをこじ開けられず、速攻以外に得点が生まれない。逆に谷村里佳に北村悠貴とチャンスを確実に決める日立の効率の良さの前に、攻守にフル回転しながら点差が縮まらない苦しい展開となった。
ここで違いを見せたのは東藤なな子だった。高橋華菜が思い切りの良い3ポイントシュートを決めた直後、直後のリスタートのパスをスティールして得点を奪うと、続く攻めではドライブからのスピンムーブで相手をかわし、ヘルプを引き付けてのキックアウトで坂本美樹の3ポイントシュートをアシストと、重苦しい雰囲気を断ち切る貴重な働きを見せた。
なおも粘る日立は残り37秒で3ポイントシュートを決めて74-72と逆点に成功するが、タイムアウト後の攻めで東藤がゴール下に飛び込み、バランスを崩しながらもジャンプシュートを決めて追い付く。直後に谷村にフリースロー2本を与えるも、2本とも失敗で命拾い。残り20秒からの攻めを託されたのは東藤だった。東藤は強引なドライブを仕掛けるも、マークに付く北村を振り切ることができず。それでもコンタクトを受けながら強引に放ったシュートをねじ込んだ。『東藤タイム』が炸裂した後、残り0.8秒では日立にチャンスはなく、トヨタ紡織が76-74で接戦をモノにした。
「オフェンスの部分も、紡織の全員バスケにも注目してほしい」
東藤は日本代表の一員として大会前日のトヨタ自動車との練習試合で15分、大会初日のシャンソン化粧品との試合では18分プレー。大会2日目からトヨタ紡織に戻るとすぐさま先発に据えられ、デンソー戦では28分で19得点を挙げ、この日立戦でも26分のプレーで19得点と、4日連続の試合出場ながら素晴らしいパフォーマンスを披露した。
「昨日の試合で結構得点に絡めたので今日も行こうと思ったんですけど、思うようにプレーできなくて、後半の大事な場面でもあまりドライブに行けなかったので、責任を持って最後は決めようと思いました」と、東藤はこの日の決勝シュートを振り返る。
「時間を残さないように自分の1対1で行こうと思ったんですけど、タイマーがどこにあるか分からなかった(笑)」と、言わなければバレない失敗を明かしながらも、「オリンピックではディフェンスが役割でしたが、紡織では得点にも絡まなければいけない。でも自分のペースでやりたいプレーをやらせてくれるので、すごくやりやすかったです」とプレーへの自信を語る。
「後半は我慢するところでしっかり我慢して、ディフェンスから走る自分たちのバスケができた」と、チームの戦いぶりにも手応えを得られた。「去年のチームから紡織は5人全員で攻めて全員で守れる強みがあるので、それは継続して、選手の間でもコミュニケーションが増えた印象なのでまた強くなっていくと思います」
ルーキーイヤーからトヨタ紡織のエースとして活躍する東藤は、オリンピックを経て一回りスケールの大きな選手に成長できたはず。「オリンピックでファンになった方、興味を持たれた方には、自分のディフェンスの印象が強いと思うんですけど、そこだけじゃなくオフェンスの部分も、紡織の全員バスケにも注目してほしいです」と彼女は言う。10月に開幕するWリーグでは、急成長を続ける東藤と、彼女が牽引するトヨタ紡織のバスケに注目したい。
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