文・写真=三上太

思い切りの良さが勢いになると、どれだけ経験豊富なチームでも止められないのか……改めてそんなバスケットの一面を見たゲームだった。

ブレックスアリーナに秋田ノーザンハピネッツを迎えた栃木ブレックスは、68-83で開幕戦を落とした。大型補強をして、プレシーズンゲームを戦ったチームからも一目置かれていた栃木の敗戦には、少なからぬ驚きがあった。

竹内公輔の移籍後初ゴールで動き始めたゲームは、序盤からお互いが激しくぶつかり合う。第1クォーターを終えて17-20。秋田ブースターの反感を買うのを覚悟で書けば、「秋田、頑張って食らいついてるじゃん」という感想。

第2クォーターに入り、古川孝敏のジャンプシュート、ライアン・ロシターのリバウンド押し込みなどで栃木が一歩抜け出すと、守備でも秋田のオフェンスを狂わせる。ここがポイントになるのか――だが、その思いは大きく外れた。お互いが決めきれない展開となった中盤、先にリズムをつかんだのは秋田だった。

ディフェンスで我慢を続け、ジリジリと追い上げる、秋田の菅澤紀行、安藤誓哉の3ポイントシュートで栃木を一気に突き放す。一方の栃木はシュートが決まらず、遠藤祐亮のフリースロー、ジェフ・ギブスのシュートが単発で決まるだけ。前半は33-42で折り返した。

後半に入っても秋田の流れは変わらない。攻守ともに激しく、「ミスを怖れず、思い切りやろう」という長谷川誠ヘッドコーチの檄が、選手たちの心に共鳴した。前半無得点だった田口成浩が後半だけで19得点の爆発力を見せる。古巣を相手にした安藤も、目の前にいるのが田臥勇太であろうが誰であろうが、積極的にゴールへアタックを仕掛ける。

対する栃木は1対1でもチームディフェンスでも後手を踏んでリズムを掴めない。

「おっ、波が来るか?」と思った瞬間、秋田の安藤に3ポイントシュートを沈められ、会場を埋め尽くす栃木ファンも沈黙。栃木を率いるトーマス・ウィスマンは試合後、「彼を手放したのは賢い判断ではなかった」と、安藤の活躍を称えた。

波に乗り続けた秋田と、最後まで止められなかった栃木

秋田の長谷川誠ヘッドコーチは、勝因を「ディフェンス」と挙げた。今シーズンのテーマとしているディフェンスを一生懸命にやることで、「栃木がミスをしてくれて、ノーマークのシュートも落としてくれた。それでウチが運よく、気持ちよくオフェンスに入れた」と語る。

一方、敗れた栃木のヘッドコーチ、ウィスマンは「予想していたシーズンの始まりではなかったが、すべてにおいて秋田が上回っていた。クォーターごとの得点もそうだし、激しさでもそうだ。その激しさこそが、今日一番の敗因だ」と振り返る。

さらに「秋田の2ポイントシュートが42%、3ポイントシュートが54%……。こんな確率で決められるディフェンスをしていては勝てない。リバウンド総数では勝っているが、秋田は9本のオフェンスリバウンドから11得点を挙げているのに対して、栃木は15本のオフェンスリバウンドから2得点しか挙げていない。フィニッシュが良くなかったのは明らかだ」と続ける。

田臥も「ターンオーバーを16個もしてたら勝てない」と試合を振り返った。完敗するにはそれだけの要因があるわけだ。

それでも、長谷川ヘッドコーチは「明日はこううまくはいかないだろう」と言う。ウィスマンヘッドコーチも「明日は全くチームを見せられると思う」との言葉を残して会見場を去った。これだけを切り取ると、明日は栃木が優勢にゲームを進めるかもしれない、なんて思ってしまうが、長谷川ヘッドコーチがそう簡単に道を譲るとも思えない。

明日のブレックスアリーナは今日以上に白熱しそうだ。