文=三上太 写真=野口岳彦

思い切りの良いプレーを見せるも「納得いかない」2試合に

開幕戦7分32秒、第2戦8分52秒。それが琉球ゴールデンキングス、津山尚大がBリーグで踏み出した『はじめの一歩』である。

誰もが緊張しておかしくない開幕戦の前半は、むしろ落ち着いていた。日本が誇るビッグマン、アルバルク東京の竹内譲次(207センチ)の上をフワリと越すフローターシュートを沈めると、2分後には速攻からザック・バランスキー(193センチ)をシュートフェイクでかわし、ドリブルで詰めた後に、またも竹内譲次のチェックを受けながら、バックボードを使ったシュートを決めた。本人も「前半は思い切ってやるだけだったので、慌てることはなかった」と認める。

しかし後半はチームの悪い流れを変えることができなかった。「安定して得点を取ることが仕事」と自認する津山だが、それができずにチームも敗れた。「正直、全然納得いっていません。悔しいゲームでした」

第2戦は出場時間こそ増えたものの、その半分は試合の大勢が決まったところでの出場だった。3ポイントシュート1本を含む3本のフィールドゴールもネットを通過することはなかった。

悔しさで自らを失い、つい思わぬことまで口を突いてしまう。「納得もいかないし、使われる意図も分からない……。悔しいというより、何でかな? という疑問のほうが大きい」

華やかで、歴史的な開幕戦は、しかし、リーグ最年少、20歳の若者に苦さだけを残した。

悩み、もがけ! それでも大志を抱き続けろ!

福岡大学附属大濠高校を卒業して2年。アーリーエントリー制度を使って、高校在学中からチームと契約をかわした。プロとしては3年目のシーズンとなる。

多くの大学のオファーを断り、自らの夢である琉球入りにこだわったのだ。福岡大学附属大濠を率いる片峯聡太監督は何度も大学進学を薦めたと言う。「でもブレん……あいつは最後までブレんかったです」。津山の信念が、片峯監督の希望を上回った。

「その時の選択が間違っていなかったことを証明したい。これからバスケットが大きく取り上げられるようになって、僕がしっかり活躍すれば、高校を卒業してプロに行ってよかったと思ってもらえるはず。そうなるように頑張りたい」

高校時代は「得点=3ポイントシュート」という意識が強かった。最後のウインターカップの決勝戦でも「バンバン打っていた」と振り返る。結果としてその試合は敗れるのだが、いわばそれも「ブレない」津山の真骨頂だったのかもしれない。

しかしプロとしての日々を重ねるなかで、その意識に変化が生じてきた。得意な3ポイントシュートを生かすために、今オフにはドライブを意識的に練習したというのだ。Bリーグでの初得点となるフローターシュートはその成果だ。

ブレているわけではない。発想の転換、プロとして持ち合わせるべき柔軟性である。

「ドライブで切り込んでいけるようになれば、日本だけでなく、ヨーロッパでも戦っていけるんじゃないかと思っています」

琉球に入団することを目標にしていた高校生は、次なる目標としてヨーロッパの舞台を思い描いている。簡単な道のりではない。いや、それ以前に自らも認めることとして、琉球で結果を出さなければ、ヨーロッパなどは夢のまた夢である。

「今はどうしてプレータイムが少ないのかも分かっていません。そこをもう少し追究しながら、これからのリーグを戦っていきたいです」

プレータイムや得点などを気にするのは若い証拠だ、と大人たちは言う。青臭さが抜けていないんだと。そうかもしれない。

でも、だから、どうした。リーグ最年少、20歳の青年である。変に賢く立ち回るより、今は青臭いくらいがちょうどよい。自らの数字にギラギラしている若者が、齢を重ねて成熟したとき、その情熱は「向上心」と呼ばれるようになる。

大いに悩め。大いにもがけ。その先に、目標とする舞台はある――。