内藤英真

内藤英真は181cm84kgのポイントガードで、昨年3月に西福岡中を卒業した後、アメリカのIMGアカデミーへと進学した。IMGアカデミーは世界最高峰のスポーツエリート養成機関として、日本ではプロテニスプレーヤーの錦織圭を輩出。バスケでは田中力がプレーしていた。コロナ禍の今、海外でのバスケ留学はこれまで以上に制約の多いものとなっているが、世代トップのガードである内藤は自分自身の可能性を引き出し、高いレベルに挑戦し続けている。新学期を迎えるべくアメリカへと戻る直前の彼に話を聞いた。

「環境は整っているので、自分がやるかやらないかだけ」

──まずは自己紹介をお願いします。また、西福岡中から日本の高校ではなくIMGアカデミーに進んだ経緯を教えてください。

内藤英真です。2004年12月1日生まれの16歳、滋賀県で生まれて福岡県で育ちました。西福岡中の出身で、全中ではベスト8に行きました。個人としてはU14、U15のキャンプで最終メンバーまで残って、ジュニアNBAに日本から1人だけ選ばれました。

西福岡中では1年の頃はベンチ入りできず、足も遅いし跳べないし、中学生にしては少し大きいぐらいしか長所がなくて、とにかく必死に練習していました。鶴我(隆博)先生は「体重がないヤツは信用しない、体重を減らすヤツは信用できない」といつも言っていたので、練習以外にも体重を増やそうと頑張って、1年で10kgぐらい体重が増えて、ドリブルもつけるようになって、新人戦からユニフォームをもらえるようになりました。2年生の時に全中の決勝まで行っているんですが、先輩がケガをして僕がスタメンになったのが最初の転機だったと思います。僕自身はそれほど活躍していないのに順調に勝ち上がって、最後は負けたけど良い経験ができたし、そのおかげでU14に呼ばれたんだと思います。U14ではトライアウトにもパスして最後まで残って自信になりました。

IMGは小学校6年生の時、1週間のトレーニングキャンプに行ったのが最初です。IMGではいろんなキャンプをやっているのですが、その時はアメリカではなくいろんな国から選手が来て、189cmのノルウェー人の高校生もいました。それが一つのきっかけで、もう一つはジュニアNBAに選ばれてアメリカでいろんな国の選手と試合をしたことです。そこで通用する部分があると感じたことで、アメリカでもやれると思うようになりました。

日本のどこかのチームに行っていたらどうなっていたかな、と思うことはありますけど、国内とか海外に執着していないので、今のところはアメリカに行って良かったと思っています。

──IMGアカデミーでは、どんな環境でバスケをやっているのですか?

午前と午後で、勉強とスポーツで完全に分かれます。日本人はみんな寮に住んでいて、バスケだとスキル、ウェイト、栄養などそれぞれのコーチがいて、スキルコーチはドリブル、シュート、コーディネーションと専門で分かれています。チーム練習は1時間半だけで、あとは個別に練習します。体育館はいつでも使えるし、設備があるからシューティングもできます。環境は整っているので、自分がやるかやらないかだけですね。

IMGの中にも多くのチームがあって、トップはナショナルチームで全米大会に出ます。その下に学年別のチームがあって、ミドルスクール(中学生)のチームもあります。今はとにかくナショナルチームに入るのが目標です。去年も今年もNBAドラフトに2人指名されていて、全然レベルが違いますね。日本とのレベルの差で言うと、日本に来る2mを超える留学生プレーヤーがガードをやって3ポイントシュートも打って、フリースローラインの手前から跳んでダンクする感じです。スピードやジャンプ力の身体能力は桁違いなので、そこでは絶対に勝てないです。

──でも、内藤選手はそのチーム内競争に勝たなくてはいけません。どういうやり方で活躍するつもりですか?

ガードの技術であるコントロールとゲームメーク、パスの精度、ずるさ。あとはハンドリングであり、ディフェンスとかハッスルですね。ルーズボールを追うようなプレーでは日本ではあまりやっていなかったんですけど、アメリカではそれが一番見てもらえる、使ってもらえるプレーだと思っています。

内藤英真

「NBAばっかり見てないでカレッジを見ろ、と言われます」

──英語の面でコミュニケーションは大変だろうし、文化の違いもあります。バスケ以外だと何が一番大変ですか?

最初は英語ができず気まずかったですね。でも何カ月かしてコミュニケーションが取れるようになると、それはそれで馬鹿にされるんです。差別ではなく、ふざけているんですけど、日本でも留学生がちょっとしゃべれるようになるとイジりますよね。あんな感じで発音が違うことを馬鹿にされたり。でもそこは負けていられないので、頑張るしかないです。

こっちが英語をしゃべっていて馬鹿にされると、本当にイラッと来る時があるんですよ。お前らはアメリカ人だから当たり前だけど、俺は自分の言語じゃないんだぞ、って。でも、僕はガードだから試合中もしゃべらざるを得ないので、馬鹿にされても恥を捨ててどんどん発言していく。そうやっていくうちに自然と変わりました。

IMGには日本人とか英語圏じゃない学生向けのクラスがあって、そこで英語の授業を取りながら他の勉強もします。今は順調にレベルが上がってきて、秋からは英語の授業が減るんですよね。数学は日本人は得意だし、理科も大丈夫です。でも社会はちょっと大変かもしれません。もともと中学の頃からテストでは平均点より20点ぐらい上を取っていたので、すごく成績が良いわけじゃないけど苦手ではありませんでした。でも提出物で稼ぐタイプでした(笑)。

生活面はコロナの規制が激しいので、あまり楽しむことはできていません。去年は試合以外でIMGの外に出ることは一切なかったですし、ミーティングもすべてオンラインだったんですけど、今年はみんなワクチンを打っていて、普通に会って話せるようになりました。それでも、数は減りましたがIMGの中でもイベントはあって、プールとか卓球台とかサッカーフィールドを使ったり、ゲームをしたりテレビでバスケを見たりしています。

──八村塁選手、渡邊雄太選手のNBAでの活躍は刺激になりますか。

もちろんです。ですが誰もが注目しているほどではなくて、八村選手はドラフトにかかったから名前は知ってる、ぐらいの人もいます。向こうはNBAだけ見ているわけじゃないので。僕もコーチからは「NBAばっかり見てないでカレッジを見ろ」と言われます。NBAよりもカレッジがメジャーというか、見ている人は多いですね。

──Bリーグを見ることは?

普段はあまり見ないのですが、チャンピオンシップとかになると見ます。B1でプレーしたみたいと思うこともあります。

内藤英真

「目標はNBA、そうやって目指していかないとNBA選手にはなれない」

──これからバスケ選手として、どんなキャリアを作っていきたいですか? また海外を目指す選手にアドバイスできることは?

やっぱり目標はNBAなんですけど、いろんな挑戦をしたいと思っていて、アメリカでプレーすることだけを考えているわけではありません。日本の中学生を考えると、テレビとかネットでインターハイやウインターカップが見れるからか、全国大会に出られる高校に行くことだけを考えてしまっています。僕はそういう思いがなかったから別のルートに進むことができました。

テーブス流河くんは仲が良いんですけど、この夏からアメリカに行きました。英語がしゃべれるから最初の時点で僕より勝っているんですよね。だからバスケじゃ負けたくないって気持ちはあります。スペインの岡田大河くんとは会ったことがないんですけど、興味があります。オリンピックを見てもアメリカ以外に強い国はいっぱいありました。進路はどこか一つに執着するのではなく、広く考えた方が良いと思います。

バスケで言ったら、KAGOもそうですがクラブチーム系は声をよく出しますよね。海外でやるならコミュニケーションがとにかく大事になるので、練習から声を出す、何かあればみんなで話し合うようにするのが大事だと思います。

──あこがれている選手はいますか?

好きな選手はステフィン・カリーです。小学生でまだ試合をあまり見ない頃に、テレビでたまたまやっていたのがアメリカの試合で、背番号4のカリーが3ポイントシュートをめっちゃ決めててシビれたので、それからカリーはずっと好きです。ロールモデルにしている選手は特にいなくて、同じプレースタイルの人はいないと思っています。でも、いろんな選手のムーブは真似していて、ジェームズ・ハーデンのレイアップに行く時、特にディフェンスが寄せてきた時のファウルのもらい方とかは見ていますが、誰かにあこがれている、というのはありません。

──またアメリカに向かってバスケに打ち込むわけですが、見てくれている人へメッセージをお願いします。

一番の目標はNBAです。みんなが言うように、そうやって目指していかないとNBA選手にはなれないと思っています。いろんな道を通って、最終的にはトップで活躍できるように頑張ります。