ラッセル・ウェストブルック

ドワイト・ハワード「僕らはみんな過小評価を覆す」

まずはスター選手を獲得して、それからどうするか考える。これは『持てる者』の思考回路で、NBAではレイカーズがそれに当たる。今回もラッセル・ウェストブルックの獲得をまず決めて、後のことはそれから手を打った。

レブロン・ジェームズとアンソニー・デイビスの負担を軽減して、プレーオフで勝てるチームを作るのがレイカーズの今オフの課題で、2人のエースをロールプレーヤーが支えるチームが昨シーズンに機能しなかったために、もう一人のスター選手を取る方針へシフトした。選手層の厚みは削がれることになるし、3ポイントシュートは弱点になりそうだが、最初の時点で市場に出ている最高の選手をライバルチームに先んじて取るのが一番で、それ以外の課題に対する答えを持ち合わせているわけではなかった。

それでも、上手く帳尻を合わせて最終的に強力なロスターを作るのが、編成を司るロブ・ペリンカの仕事だ。ウェストブルックだけでなく、トレバー・アリーザ、カーメロ・アンソニー、マリーク・モンク、ケンドリック・ナン、ウェイン・エリントン、ドワイト・ハワードと計算できる戦力を迎え入れている。

一昨シーズンの優勝メンバーであるハワードはレイカーズ復帰の会見で「ラス(ウェストブルック)は過小評価されている。僕たちはみんな過小評価されているんだ。ここで一生懸命やって優勝することで、それを覆そうとしている」と語る。ウェストブルックについては「みんな、優勝した時には彼に感謝することになるよ」と予言した。

レブロンとデイビス、ウェストブルックの『ビッグ3』が機能するには、全員が少しだけ譲歩してチームプレーを意識しなければならない。レブロンはプレータイムが減ることも歓迎するだろうが、ウェストブルックの作り出す速いテンポはあまり好きではないだろう。デイビスはウェストブルックがリムアタックして自分にパスが出てこないことにフラストレーションを感じるかもしれない。そしてウェストブルックは、スター選手と並んでプレーすることに慣れてはいても『3番手』の役割を受け入れられるだろうか。

ただ、ウェストブルックが自己中心的な性格で、自分のスタッツのためにプレーする、という偏見は間違っている。彼は誤解されやすい選手だが、過去何シーズンもチームの勝利のためにプレーできることを示してきた。ロケッツでは、ハーフコートオフェンスではジェームズ・ハーデンが、トランジションではウェストブルックがゲームメークの主導権を持つことでプレーをシェアできた。ウィザーズでも比較的早く、もともとのプレースタイルを変えさせることなく、彼から合わせにいく形でフィットしている。昨シーズンの成績が上向かなかったのは、ケガや新型コロナウイルスなどバスケ以外の要因が多すぎたからで、彼のエゴが原因ではない。

2021-22シーズンのレイカーズは、レブロンとデイビスのコアにウェストブルックを組み合わせる作業をまず高いレベルでやり遂げなければいけない。だが、これは昨シーズンのように、ロールプレーヤーで2人のコアを支えるよりはずっと上手く行く可能性が高い。来年の5月には見事な連携が確立されているはずだ。NBAで誰よりもタフなウェストブルックがより大きな責任を負うことで、レブロンは疲弊することなくプレーオフを迎えることができる。疲労困憊でポストシーズンを迎える失敗を繰り返さないこと。それさえできれば、レイカーズは西カンファレンスのトップチームに返り咲くことができる。