「次に繋がるオリンピックになったと思います」
バスケットボール女子日本代表は、日本バスケ界史上初となる銀メダルを獲得して東京オリンピックの幕を閉じた。
「オリンピックの最終日まで残って試合ができたのは本当に良いことだと思いますし、皆さんにここまで注目されてうれしい気持ちと、最後は見てくださっている中で自分たちのプレーをあまり出せなかったことは、自分の中では悔しい気持ちの方が多いです。でも課題が残ったので、次に繋がるオリンピックになったと思います」と林咲希はオリンピックを振り返った。
林は予選ラウンドのナイジェリア戦で11本中7本の3ポイントシュートを成功させ、その力を世界に見せつけた。決勝トーナメントでも厳しい相手のマークに合う中で、ベルギーとの準々決勝では残り16秒で逆転3ポイントシュートを成功させて勝利の立役者となった。
それでも試合を重ねるごとに林やもう一人のシューター、宮澤夕貴へのマークは厳しくなり、アメリカとの決勝戦で林は3ポイントシュートを1本しか打つことができなかった。「もちろん、一昨日のフランス戦のように自分のところやアースさん(宮澤)のところをディナイするので、ガードのところでドライブを狙っていこうとやっていました。でも、試合の中でガードがあまりドライブに行けない状態になった時に、カッティングとかでも相手にアジャストされていた部分があったので、そこを自分たちは越えられませんでした」
もちろん細かな戦術の変更などはあるが、日本のバスケットは激しいディフェンスとスピード、3ポイントシュートを生かしたスタイルであることは変わりない。林も「自分たちがやることは変わらないんですが、それを上回るアメリカのアジャストはすごくて、やっぱり世界1位だなと思いました」と、『女王』アメリカが持つ力を認めた。
「どんな時でも『自信を持ってやれ』って言ってくれた」
日本代表の指揮官、トム・ホーバスはこれまで若い選手に多くのチャンスを与えてきた。林もその一人で、ENEOSサンフラワーズ加入当初は出場機会に恵まれなかった。それでも、ホーバスヘッドコーチは林をチームに招集し、日本代表に欠かせない3ポイントシューターに育てた。もちろん、林本人の努力があってこそのものだが、3ポイントシュートを武器とする日本代表に林のプレースタイルは見事にハマった。
林は、ホーバスコーチが率いるこの日本代表について「最高でした」と言い、指揮官への思いをこう語った。「自分が代表に入る前から金メダルを目指してやっていて、すごく引っ張ってくれました。どんな時でも『自信を持ってやれ』って言ってくれて、すごく期待してくれていたのに、最後はあんまり応えることができませんでした。途中のベルギー戦とかでは貢献できたと思いますが、トムさんの気持ちを超えられるような、トムさんが予想している以上のことをもうちょっとやりたかったなというのがあります。これからどうなるのか分からないですが、トムさんが驚くような選手になりたいです」
決勝戦では指揮官の期待に応えることができなかったと悔やむ林だが、そこまでの道のりでは何度も彼女の3ポイントシュートは日本を救ってきた。目標の金メダルには届かなかったが、「次に繋がるオリンピックになった」と林が言うように、これからのさらなる成長に期待したい。