林咲希

「ドライブという選択は自分の頭の中には全くなかった」

バスケットボール女子日本代表はベスト4進出を懸け、東京オリンピック準々決勝でベルギーと対戦した。

何度も同点に追いつくが逆転までが遠い、そんな苦しい展開が最後まで続いた。それでも、あきらめなかった日本は2点ビハインドで迎えた残り16秒に、林咲希が3ポイントシュートを沈めて土壇場で逆転。ラストポゼッションを守り切り、86-85で勝利した。

決勝3ポイントシュートを決めた林は無我夢中でタイムアップの時を迎えた。「終了のブザーかちょっと分からなくて、『勝ったんだ!』っていうのが1、2秒遅れたんですけど、心の底から本当にうれしかったです」

林はナイジェリアとの予選ラウンド最終戦で11本中7本の3ポイントシュートを成功させて勝利の立役者となった。そのため、当然のようにベルギーから徹底マークを受け、なかなか自分のリズムでシュートを打つことができなかった。それでも、林は逆転の1本を含む、8本中3本の3ポイントシュートを成功させた。

林は言う。「(大当たりした)次の試合は入らないことが多くて、今回もそうでした。でも、自分がすごいマークをされている中で3ポイントシュートを3本決めることができたのは、前より成長できたかなって思っています。あれだけディナイされても打つ場面が来るんだなって、それも学べたし次に繋げる試合もできたのかなと思います」

チームには3ポイントシュートが得意な選手が揃っているが、ピュアシューターと呼べるのは林と三好南穂の2人だと言える。もちろん、ディフェンスでもハードワークができるから林は先発に据えらえている。それでも、シューターとしてのプライドを持っているからこそ、あのビッグショットが生まれたのだ。

「怖さはなかったです。それまでのシュートは落ちていたんですけど、ドライブという選択は自分の頭の中には全くなかったです。コートに立っている以上は自分の仕事を果たすのが使命というか。あまりプレッシャーは感じずに、もらったら打とうというのは変わらずやれたと思います」

林咲希

「トムさんの思いを受け継いで勝てたのは本当にうれしい」

クラッチシュートを決める勝負強さを見せた林だが、そのシュートを打つ直前の冷静さも見事だった。残り時間が少ないことに加え、ショットクロックも残り5秒。通常であればパスをもらった瞬間にシュートを打ってしまいそうな場面だが、林はシュートフェイクで1人をかわし、落ち着いてシュートを沈めた。林はその時の心情をこのように話した。

「秒数も少なくて、ちょっと遠いところでパスをもらいましたが、相手が『あっ、跳んだな』て思って。練習通りそこから打ちました。打った時は入るなとも思いましたし、ちょっと大きいかなとも思って。とりあえず入れって思いました(笑)」

ベスト8の壁を乗り越えた日本は、史上初の準決勝に挑む。指揮官のトム・ホーバスはヘッドコーチに就任した当初から、東京オリンピックでの金メダル獲得を目標にしてきた。その挑戦がどれだけ難しいことかは分かっているが、明確な目標があるからこそ選手たちもその言葉を信じて努力を重ねてこれた。林にはすでに明確なビジョンが浮かんでいる。

「トムさんの思いを受け継いで勝てたのは本当にうれしいです。どこが来ても勝ちます。ここまで来たらというか、トムさんはそういうプランを描き、自分もそういうプランだと思ってここまでやってきたので。絶対に勝って決勝に行って、金メダルを取りたいと思います」

https://twitter.com/gorinjp/status/1422864357285761027