強烈なプレッシャーをかけるディフェンス力は大会No.1?
2012年のロンドンオリンピックでアメリカに83点差で敗れたナイジェリアですが、オリンピック前のエキシビジョンマッチでは、そのアメリカを破り、鼻息荒く東京に乗り込みました。まだまだ準備段階とはいえ、スター軍団のアメリカに個人のマッチアップで一歩も引かない戦いぶりを演じただけに、オリンピックでの躍進を期待したくなります。
12人のロスターには8人の現役NBAプレイヤーが名前を連ねており、肩書だけならばアメリカに次ぐレベルのスター軍団です。しかし、この8人のうち所属チームのローテーションに入っていると言えるのはティンバーウルブズのジョシュ・オコーギーくらいで、肩書とは違い『豪華メンバー』というには厳しいチームです。
そのオコーギーがポイントガードとしてチームをリードするものの、パスミスやドリブルミスを連発してしまい、なかなか思うようにオフェンスを構築できていません。それもそのはず、普段のオコーギーはスモールフォワードで、プレーメークに参加することはなく、相手エースを消しに行くディフェンスを得意とするハードワーカーです。ウルブズとは全く違う役割はオコーギーの成長には繋がりますが、スキル不足は否めません。エキシビションマッチでもターンオーバーから速攻を出されるシーンが何度もありました。
しかし、この速攻を強烈なブロックで止めてしまうのもオコーギーの持ち味で、ディフェンスではアメリカのスーパースターですら、まともにボールを持つことすらできないほどのハイプレッシャーで追い込みます。オコーギーに限らず、ナイジェリアのNBAプレイヤーは所属チームではディフェンスとハードワークを求められるロールプレイヤーばかりで、オフェンス力よりもディフェンス力に特徴があるチームになっています。
アメリカ戦では6本の3ポイントシュートを成功させて21得点を奪ったヒートのゲイブ・ビンセント以外を除き、NBAプレイヤーで19得点しか奪っておらず、頻繁にオフェンストラブルになりそうな雰囲気です。一方でNBAプレイヤー以外は強気にシュートを打って50得点を奪いました。NBAプレイヤーがディフェンスで相手を徹底して追い込み疲れさせ、オフェンスはNBA以外の選手が決めてリードをもたらす、一風変わったロスター構成になっています。
各チームの主役が集まったアメリカは、それぞれがボールをもらってから次のプレーを考える傾向にあり、鮮やかなボールムーブがなかなか出せず、繋ぎ役やスクリーナー、ゴール下でのフィニッシュといった役割が足りていませんでした。一方でロールプレイヤーばかりのナイジェリアはスムーズに連携していたのも印象的です。ディフェンスでは球際の激しさやヘルプなど、アメリカ以上に強烈なプレッシャーを持つ個人レベルのディフェンスは大会No.1かもしれません。ただオーストラリアにはパスワークで崩されており、チームディフェンスには課題が残ります。
FIBAのパワーランキングでは4位に位置付けられ、ナイジェリアの躍進は世界中から注目されています。荒さも残るチームではありますが、強烈なエナジーを発する戦いぶりは観客を大いに興奮させてくれます。無観客試合で直接エナジーを感じることができないのは残念ですが、画面越しでも迫力あるプレーでファンを魅了させることでしょう。