リラードにデュラントと戦力充実も、現時点では強さを感じさせず
超過密日程となったNBAのシーズンを終え、ケガや休養優先による辞退者が多く出たものの、それでもアメリカ代表は豪華メンバーを揃えてきました。顔ぶれを見ればスーパースター軍団と呼ぶに相応しいものの、明確な3つの弱点を抱えており、FIBAのパワーランキングでも3位に位置付けられ『優勝候補筆頭』という雰囲気ではありません。
1つ目の弱点はロスター12人のうち、NBAファイナルに出場している3人がいまだに合流していないことで、エキシビジョンマッチに不参加となり、東京で合流しオリンピック本番に臨むことになります。しかも、合宿中にブラッドリー・ビールとケビン・ラブの2人も離脱してしまったことから、しっかりと連携を作ってきたのは7人のみとなります。さらに来日直前になってザック・ラビーンもプロトコルで合流が遅れました。
2つ目の弱点はポイントガードの人数不足によってオフェンスがチグハグなことです。デイミアン・リラードがコートにいる時間帯はピック&ロールから展開する明確な形を持っているものの、彼がベンチに下がると一気に停滞します。NBAファイナルを終えたドリュー・ホリデーが加われば選手層は厚くなるものの、ディープ3ポイントシュートを駆使するリラードとはタイプが異なり、どのようなオフェンスになるのか見えてきません。
3つ目の弱点は各チームの主役級が揃いすぎたことで、オフボールの動きに乏しく、ボールウォッチャーばかりになってしまうことです。これはアメリカ代表が毎回抱える悩みですが、これまでは継続的なチーム作りで補ってきていました。しかし今回は2019年のワールドカップに出た選手がジェイソン・テイタムとクリス・ミドルトンしかおらず、新しい役割分担を作り込むことから始める必要がありましたが、エキシビションマッチ4試合で解決した気配はありません。
7月下旬までNBAファイナルが続くスケジュールの大幅変更やケガ人続出など、新型コロナウィルスの影響が色濃く出ているところに、アメリカらしい欠点も加わって苦しい状況でオリンピックの開幕を迎えることになります。しかし、ポジティブな要素もあります。追加で加わったケルドン・ジョンソンはアグレッシブなディフェンスと献身的なランニングで『スーパースターにはない特徴』を加えてくれました。不足していたサポート役だからこそ、スーパースター軍団の中できらめきを放ち、スペイン戦では15得点を記録して、会場からは誰よりも大きな拍手が送られました。
苦しい戦いが予想される反面で、個々の強みを生かした戦い方は簡単には攻略されない強みもあります。そして接戦に持ち込めば、リラードとケビン・デュラントという最高のクラッチプレーヤーで勝負を決められる強みも持っています。距離もディフェンスも関係なく決めてくるNBAの中でもスペシャルな存在は、多少の不利をいとも簡単に覆してきます。
現時点では爆発的な強さを感じさせないアメリカですが、エキシビションマッチも少しずつ状態は上がっており、オリンピック本番の予選リーグから決勝までの7試合を通し、最後に最高の状態に持ってくると考えれば、大きな問題ではないかもしれません。優勝に向けて一戦ずつ成熟していくチームの移り変わりを、勝敗とともに眺める大会になりそうです。