相手のハイプレッシャーに屈さず試合をコントロール
バスケットボール男子日本代表はオリンピック前最後の国際強化試合であるフランス戦に81-75で勝利した。
日本は最高のスタートを切り、46-30と大量リードを奪って前半を終えた。先発ポイントガードの田中大貴も「みんな出だしから集中して試合に入れていた。こういう強いチームとやる時に自分たちがターンオーバーをしてしまうと流れを渡してしまうが、前半はゼロということで集中してできていた」と語り、ミスのないバスケットができたことを勝因に挙げた。
フランスはNBA選手5人を擁する強豪で、世界ランキング7位とかなりの格上だ。もちろん日本にとっては初めての勝利であり、強化試合とは言えども歴史的1勝と言える。田中はこの勝利がもたらす効果についてこのように語った。
「メンタル的な要素が一番大きいのかなと思います。やっと12人が揃って、みんなが同じ方向を向いて同じ目標に向かって取り組めているという雰囲気がすごく良いです。合流した彼らの個の力はすごく高いものがあるし、その部分で試合をうまく作れている部分は結構大きいですが、もっと良くしていけると思う。もっとコミュニケーションを取って、できるだけ一番良い状態で試合を迎えたい」
田中の本来のポジションはシューティングガードだが、代表ではサイズアップを目的に2年前からポイントガードを任されている。ポイントガードは一朝一夕でこなせるポジションではないが、バスケIQの高い田中はスムーズにポジション変更に対応している。そして、その万能性は海外組が加わったことでさらなる威力を発揮している。
「走れるメンバーが揃っているし、サイズがある選手でもボールをプッシュできるので、自分がわざわざ受けに行く必要もなく走れる時は自分も走っています。逆にポイントガードじゃなく、いつもメインでやっているウイングの2、3番のプレーをすればいいだけなので、そこは上手く機能しています」
田中は八村塁、渡邊雄太に続いて長い26分24秒間出場し、6得点4アシスト2スティールを記録。相手の激しいプレッシャーを受けてもボールを失わず、オフェンスが停滞した時には自らもアタックするバランスの良いゲームメークを見せた。こうした落ち着いたゲーム運びができたのは、2年前に世界との差を痛感したワールドカップの経験があってこそと田中は言う。
「ワールドカップを経験して、そのイメージを常に持ちながらBリーグでもやってきたつもりです。経験がないまま迎えたワールドカップとは違って、今は自分が体感した高いレベルを常に想定できていることが一番違います」
司令塔ならではの「気持ち良くプレーさせたい」という考え
日本は海外組と国内組が融合したことでフランス撃破に成功した。特に八村と渡邊はNBAプレーヤーの貫禄を見せつけるパフォーマンスを見せている。しかし、同じ海外組の馬場雄大はフィジカル色の強いディフェンスや身体能力を生かしたリバウンドなど、数字に表れない部分での貢献度は高いが、特別なインパクトを残しきれていない。アルバルク東京でともにプレーしていた田中は「彼の考え方や性格は近くにいたので分かっているつもりです。オーストラリアでやってきたという自信があり、それを出したいという気持ちが前面に出ていて、それがちょっと上手くハマっていない」と、気持ちが空回りしているのではないかと語った。
それでも馬場の力を誰よりも知っている田中は「心配はしていないです」と、大きな信頼を寄せる。「彼の良さは常にリングにアタックする姿勢やトランジションでどんどん前に走ることだったり、ディフェンスをするところ。彼のリズムが一番良い時は速い展開でボールをプッシュしている時なので、前を走っている時はボールを渡してあげて、気持ち良くプレーさせたいとポイントガードとして思っています」
慣れないポジションにもかかわらず、NBA選手を上手く使い、チームの舵取り役をしっかりこなしている田中だが、「チームがもっと上手くいくように常に頭を働かせています。経験がない分、そういうところは人一倍考えながらやるしかないと思っているので」と、さらなる向上を目指している。キャプテンとして、そして司令塔としても、田中のパフォーマンスに期待が高まる。