U19男子日本代表

ミスをチームディフェンスでカバー、ビハインドを背負うも食らい付く

U19ワールドカップは今日から決勝トーナメントに突入した。この大会では各チームに多くの試合を経験させるために、グループリーグ3戦全敗の日本代表もベスト16へと進出できる。それでも相手はグループリーグ3連勝のセルビア代表。ここで日本代表は、苦戦するだろうとの予想を覆す素晴らしいパフォーマンスを見せた。

過去3試合から大きく改善されたのはディフェンスだった。相手の速攻を許さず、ドライブに対しては鋭い出足で身体を寄せて、イージーレイアップへと持ち込ませない。ポストアップで押し込む攻めに対しても絶妙な距離感を保ったヘルプが効いてシュートを打たせず、苦し紛れに出すパスをカットして、試合序盤からセルビアのリズムを崩すことに成功した。前の試合ではミスが出ると気落ちしてしまったが、今回はターンオーバーがあってもチームディフェンスでミスをカバーし、簡単な得点を与えない。

第1クォーター終盤に10点のビハインドを背負うも、高い位置からプレッシャーを掛けての2-3のゾーンで再び踏ん張り、トランジションから思い切り良く放つシュートを決めて追いすがる。そんな日本の追い風となったのがフリースローだ。果敢なアタックでファウルを誘い、前半だけで12本のフリースローを獲得して11本を決めた。元田大陽と菅野ブルースがそれぞれフリースローで4得点。辛抱のディフェンスを続ける中、こうして得点を積み上げて一時は逆転にも成功。41-42と1点ビハインドで前半を終えた。

後半に入ってドライブにアジャストしたセルビアの守備を崩せなくなって2-12と突き放されるも、それでも集中は切らさない。山﨑一渉、小川敦也がスピードに乗ったドライブで相手の堅守をこじ開け、プレッシャーを強める相手の動きを読んだ山﨑がファウルを誘ってフリースローで得点する。セカンドチャンスから山﨑のワイドオープンを作るなど、点を取り合う中でセルビアを猛追した。

60-62で迎えた最終クォーター、日本は引き続きチェンジングディフェンスで相手のリズムを狂わせつつ、速い攻めに転じて1ポゼッション差の展開に持ち込む。残り6分半、元田のスティールから山﨑が繋いで岩下准平のファストブレイクが飛び出し、66-66の同点に追い付いた。

岩下准平

120%の力を出す強い意志を見せられたことが大きな収穫に

しかし、食らい付いてもなかなか追い付けない。残り1分を切ってセルビアはニコラ・ヨビッチが正面からのタフな3ポイントシュートをねじ込み、続くディフェンスでは岩下のシュートをブロックで叩き落すビッグプレーを連発。なおも日本はあきらめず、岩下が3本のフリースローすべてを成功させて残り15秒で1点差と詰めるが、反撃もここまで。最後は決まれば同点の岩下のシュートがリングに嫌われ、ハッスルし続けた金近廉がオフェンスリバウンドを押さえるも、再び打つ時間は残っていなかった。

最終スコアは86-89。日本代表はチームとして10スティールを記録し、相手から18ターンオーバーを引き出してそこから20得点を奪い、ファストブレイクポイントでも22-4と圧倒した。集中力を途切れさせることのなかったディフェンス、そこからのトランジションは大いに効力を発揮したと言える。ただ、フィールドゴール成功率40%(78本中31本成功)と、8ブロックを記録したセルビアのリムプロテクトに苦しんだことが、わずかに届かない要因となった。

それでも山﨑一渉は勝負どころで自ら攻めるエースの責任感を示して23得点を記録。ここまで消極的になりがちだったが、強敵セルビアを相手にそのポテンシャルを爆発させた。木林優と岩下はコンスタントに良いプレーを見せており、またグループリーグ3試合であまり良いところのなかった金近が、スタッツには表れないものの身体を張ったディフェンスでインサイドの不利を最小限に食い止めるなど、特に前日のリトアニア戦からは大きなステップアップを示した。

若い彼らにとって、一つひとつの試合が他では得難い経験になる。ただプレーするだけでなく、強敵相手にビハインドを背負っても勝利を目指して120%の力を出す強い意志を見せられたことが、大きな収穫となった。