クリス・ポールが第3クォーターに16得点の固め打ちで逃げ切り
サンズとバックスのフレッシュな顔合わせになったNBAファイナル第1戦。試合開始直前になってヤニス・アデトクンポの出場が決まるなど、慌ただしかったバックスに対し、カンファレンス決勝から中5日あったサンズが準備期間の差を感じさせる内容で、118-105と完勝しました。
お互いに88本のフィールドゴールアテンプトがあり、成功数はサンズが41本、バックスは40本とほぼ互角であったにもかかわらず、13点もの差がついた理由はフリースローの差でした。サンズが26本打ったのに対して、バックスは16本と少なく、そのうち12本はフリースローが苦手なアデトクンポに対してサンズがファウルで止めに行った結果で、試合を通してクリーンに守り切るサンズのディフェンスが光りました。
サンズは試合を通してファウルを14に留めた一方で、スティールは9つも記録しており、バックスの選手がアタックしてきた時にファウルをしないで正確にボールだけを叩き落すことに成功しました。サンズはプレッシャーを強めたわけではなく、ドライブしてきた選手がパスやシュートの判断で一瞬遅れるのを見逃さず上手く手を出していきました。
プレーオフになってからビッグラインナップを敷いているバックスのオフェンスは、インサイドに選手が固まる傾向があり、それで判断が遅れることを見越した狙いでした。またゴール下にパスが通っても複数人で囲み、ノーファウルで守り切りました。一方で3ポイントシュートへのチェックは遅くなり、44%と高確率で決められてしまっています。『ハンドラーの判断が遅い』ことにフォーカスした守り方にはリスクもありますが、準備期間が取れたことでプレーパターンを読み切っていたと言えます。
オフェンス面でサンズは18アシストしかなく、そのうちクリス・ポールとデビン・ブッカーの2人で15アシストを記録しています。ブッカーは3ポイントシュートこそ決まらなかったものの27得点、ポールは32得点とハンドラ―2人で得点を取りました。ただし、ディアンドレ・エイトンへのアリウープパスは何本も通しており、マンツーマンの意識が高いバックスディフェンスが分厚いカバーをしてこない前提で、3人の関係性で崩し切りました。
バックスにはリーグ最高のペリメーターディフェンダーであるドリュー・ホリデーがいますが、40分もプレーしながらスティールもブロックも記録せず、ファウルも1つのみと、ほぼ『ディフェンスに参加させてもらえなかった』ことが大きく響きました。スクリーンを利用しホリデーとクリス・ミドルトンさえ外してしまえば、ビッグマンが並ぶため、ブッカーとポールにとってはハンドリングとシュートスキルで対応しやすく、かといってダブルチームに来ればゴール下でフリーになるエイトンが確実に押し込んでいきました。
最大20点差がついてからミドルトンの奮闘もあってバックスが追い上げはしたものの、ブッカーとポールが時間を使ってミスの少ないオフェンスに移行するリスクを避けた戦い方で、サンズが問題なく逃げ切りました。疲労の残るバックスが自分たちから仕掛けていくことはできず、サンズに試合をコントロールされてしまいました。
サンズは万全の第1戦でしたが、控えセンターのダリオ・サリッチが足を捻ってしまい退場するアクシデントもありました。頼れるビッグマンがエイトンのみとなり、1人で19リバウンドを稼ぎましたが、高さとフィジカルではバックスに分があるだけに、エイトンの負担が大きすぎることは第2戦に向けた不安材料になります。一方でバックスはサンズのクリーンなディフェンスにやられましたが、上手くファウルを誘い出し、特にエイトンをファウルトラブルに追い込めば、サンズのゲームプランを大きく崩すことができます。
準備期間で差がついた第1戦でしたが、本番で得られる情報は多かったはず。第2戦ではオフェンスでサンズを困らせることが攻略の第一歩になってきそうです。